酔古堂剣掃 / 集情・纖腰を結風に騁す
騁纖腰於結風,奏新聲於度曲,妝鳴蟬之薄鬢,照墮馬之垂鬟。金星與婺女爭華,麝月共嫦娥竸爽。驚鸞冶袖,時飄韓椽之香;飛燕長裾,宜結陳王之佩。輕身無力,怯南陽之搗衣;生長深宮,笑扶風之織錦。
新字:騁繊腰於結風,奏新声於度曲,妝鳴蝉之薄鬢,照堕馬之垂鬟。金星与婺女争華,麝月共嫦娥竸爽。驚鸞冶袖,時飄韓椽之香;飛燕長裾,宜結陳王之佩。軽身無力,怯南陽之搗衣;生長深宮,笑扶風之織錦。
書き下し
纖腰を結風に騁せ、新聲を度曲に奏し、鳴蟬の薄鬢に妝ひ、墮馬の垂鬟を照らす。金星は婺女と華を爭ひ、麝月は嫦娥と共に爽を競ふ。驚鸞の冶袖は、時に韓椽の香を飄し、飛燕の長裾は、宜しく陳王の佩を結ぶべし。身輕くして力無く、南陽の搗衣に怯え、深宮に生長して、扶風の織錦を笑ふ。
現代語訳
細い腰をしならせて結風の舞を舞い、新しい歌を節にのせて奏で、蝉の羽のように薄く透ける鬢に化粧をし、墮馬髻の垂れた髷を鏡に照らします。金星は婺女星と華やかさを争い、麝香のように香る月は嫦娥(月の女神)とさわやかさを競います。驚いて舞う鸞のようなあでやかな袖は、ときに韓椽(韓寿)の香りを漂わせ、飛ぶ燕のような長い裾には、陳王(曹植)が贈った佩玉を結ぶのがふさわしいでしょう。体は軽くか弱くて、南陽で衣を打つような力仕事を恐れ、奥深い宮中で育ったので、扶風の女性が錦を織るような苦労を笑うほどです。
解説
玉臺新詠の序に見える、後宮の美女を描いた華麗な一節です。結風は舞の曲名、鳴蟬の薄鬢は蝉の羽のように薄く梳いた髪型、墮馬の垂鬟は後漢の梁冀の妻が好んだという片側に垂らした髷です。韓寿は西域の香を恋人から贈られた美男、陳王は洛神賦で女神に佩玉を贈ろうとした曹植です。扶風の織錦は、夫を思って錦に回文詩を織り込んだ蘇蕙の話を指すとみられます。故事を幾重にも重ね、舞・歌・化粧・香・衣を一気に描く技巧の極致です。一方で、苦労を知らない宮中の女性の姿も描かれ、華やかさの裏にある世間知らずを感じさせる結びになっています。
この章句が説くこと
美人情故事宮廷文学
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