酔古堂剣掃 / 集倩・秋水の白蘋
旨愈濃而情愈淡者,霜林之紅樹;臭愈近而神愈遠者,秋水之白蘋。
書き下し
旨愈濃やかにして情愈淡き者は、霜林の紅樹。 臭愈近くして神愈遠き者は、秋水の白蘋。
現代語訳
味わいはいよいよ濃いのに情はいよいよ淡いもの、それは霜の降りた林の紅葉です。香りはいよいよ近いのに心はいよいよ遠くへ誘われるもの、それは秋の水に浮かぶ白い浮き草です。
解説
秋の二つの景物に、相反する性質が同居する不思議を見た一則です。旨は味わい、趣のことで、霜に打たれた紅葉は色が濃く味わい深い一方で、それを見る者の心は、かえってあっさりと淡く澄んでいきます。臭は、ここでは香りの意味です。白蘋は水面に白い花を咲かせる浮き草で、秋の水辺の代表的な景物です。その香りはすぐ近くに漂っているのに、心は遠くへ、はるかな思いへと誘われていきます。濃と淡、近と遠という対立するものが一つのものの中に共存しているところに、秋という季節の深い味わいがあるのでしょう。人も同じで、情が濃やかでありながら執着が淡く、身近にいながら遠い志を持つ、そういうあり方が理想なのかもしれません。
この章句が説くこと
秋紅葉自然風雅対比
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『酔古堂剣掃』集景・霜林の紅樹霜林の紅樹、秋水の白蘋。
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