酔古堂剣掃 / 集倩・塵事を秋水蘆花に付す
秋風解纜,極目蘆葦,白露橫江,情景淒絕。孤雁驚飛,秋色遠近,泊舟臥聽,沽酒呼盧,一切塵事,都付秋水蘆花。
新字:秋風解纜,極目蘆葦,白露横江,情景淒絶。孤雁驚飛,秋色遠近,泊舟臥聴,沽酒呼盧,一切塵事,都付秋水蘆花。
書き下し
秋風に纜を解けば、極目の蘆葦、白露江に橫たはり、情景淒絕たり。 孤雁驚き飛び、秋色遠近、舟を泊めて臥して聽き、酒を沽ひて盧を呼ぶ、一切の塵事、都て秋水蘆花に付す。
現代語訳
秋風の中で舟のともづなを解くと、見渡すかぎりの葦原に、白い露が川一面に広がり、景色も心もこの上なくもの寂しくなります。一羽の雁が驚いて飛び立ち、秋の色が遠く近くに広がるなか、舟を泊めて横になって耳を傾け、酒を買ってきて賽を振り盧と叫ぶ。俗世のわずらわしいことは、すべて秋の水と葦の花に預けてしまいます。
解説
秋の川旅の寂しさと、そこで得る解放感を描いた一則です。解纜は舟をつないでいる綱を解いて出発すること、極目は見渡すかぎりです。白露横江は宋の蘇軾「赤壁の賦」に見える句で、秋の川の澄んだ冷たさを伝えます。淒絶はもの寂しさがきわまったさまで、孤雁の飛び立つ姿がその情景をいっそう深めます。一方で、舟の上で横になって風や水の音を聞き、酒を買って博打の遊びに興じるという気ままさもあります。呼盧は賽を振るとき最高の目である盧が出るよう叫ぶことです。最後の、すべての塵事を秋水と蘆花に預けるという言葉に、この旅の目的が表れています。旅に出る意味の一つは、日常の悩みをいったん景色に預けてしまうことにあるのかもしれません。
この章句が説くこと
旅秋舟遊閑適風景
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