酔古堂剣掃 / 集倩・兩足復た山雲を繞る
芒鞋甫掛,忽想翠微之色,兩足復繞山雲;蘭掉方停,忽聞新漲之波,一葉仍飄煙水。
新字:芒鞋甫掛,忽想翠微之色,両足復繞山雲;蘭掉方停,忽聞新漲之波,一葉仍飄煙水。
書き下し
芒鞋甫めて掛くれば、忽ち翠微の色を想ひ、兩足復た山雲を繞る。 蘭掉方に停むれば、忽ち新漲の波を聞き、一葉仍ほ煙水に飄る。
現代語訳
わらじを壁に掛けたばかりなのに、ふと緑深い山の色を思い出して、両足はまた山の雲の間をめぐり歩きます。蘭の櫂をちょうど止めたばかりなのに、ふと水かさの増した波の音を聞いて、小舟はまたもや煙る水の上を漂います。
解説
旅から帰ったばかりなのに、すぐまた旅に出たくなる心を描いた一則です。芒鞋はすすきで編んだわらじ、甫掛はそれを掛けたばかり、つまり山歩きから帰ったばかりであることを言います。翠微は山の中腹の青々としたところです。後半の蘭掉は蘭の木で作った櫂、美しい舟を漕ぐ櫂のことで、掉は棹と同じ意味に読みました。新漲は雨などで新たに水かさが増すことです。一葉は木の葉のような小舟のことです。帰ったと思ったらまた出かけてしまう、山と水への思いの尽きなさが、忽の字を二度重ねることで生き生きと伝わってきます。本当に好きなことは、終わったそばからまたやりたくなるものです。そういう対象を持っていること自体が、人生の大きな喜びなのでしょう。
この章句が説くこと
旅山水舟遊情熱自然
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