酔古堂剣掃 / 集倩・寒山の月に淡蕩す
留連野水之煙,淡蕩寒山之月。
書き下し
野水の煙に留連し、寒山の月に淡蕩す。
現代語訳
野の川にたなびくもやに心ひかれていつまでも立ち去れず、冬枯れの山にかかる月の光の中で、心をのびやかにゆったりと遊ばせます。
解説
野の水と寒い山という二つの景色の中で、心をさまよわせる楽しみを詠んだ短い対句です。留連は名残惜しくてその場を離れられないこと、淡蕩は心がゆったりとのびやかにたゆたうさまを表します。野水の煙は、野を流れる川の上にかかる夕もやのことで、ぼんやりとした柔らかな景色です。寒山の月は、冬の山にかかる冴えた月で、冷たく澄んだ景色です。柔らかさと冷たさという異なる趣の景色に、それぞれ異なる心の遊ばせ方を配しているところが見事です。どちらの句も、何かをするのではなく、ただ景色の中に身を置き、心を景色に溶け込ませることを楽しんでいます。目的もなく景色の中にたたずむ時間は、忙しい日々の中でこそ貴重なものではないでしょうか。
この章句が説くこと
閑適月自然風景逍遥
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