酔古堂剣掃 / 集倩・一泓の碧水空を含む
如何清色界,一泓碧水含空;那可斷遊蹤,半砌青苔滯雨。
新字:如何清色界,一泓碧水含空;那可断遊蹤,半砌青苔滞雨。
書き下し
如何ぞ色界を清うせん、一泓の碧水空を含む。 那ぞ遊蹤を斷つべけん、半砌の青苔雨を滯む。
現代語訳
どうやってこの色あふれる世界を清らかにしようか。ひとたまりの青緑の水が、空をそのまま映し込んでいます。どうして人の訪れを断つことができようか。石段の半ばを覆う青い苔が、雨をとどめて足を遠ざけています。
解説
仏教の言葉を借りながら、静かな庭の景色を問答のように描いた一則です。色界は仏教で欲界の上にある世界を言いますが、ここでは広く形あるものの世界、目に見える現象の世界の意味で使われていると読めます。一泓は水ひとたまり、澄んだ池の水が空を含む、つまり空を映していることで、色の世界の中に空が宿るという、仏教の色即是空を思わせる含みがあります。後半の遊蹤は人の訪れた足跡、半砌は石段の半分です。人の訪れを断つにはどうするか、と問い、苔が雨を含んで石段を覆い、自然に人を遠ざけていると答えます。わざわざ門を閉ざさなくても、自然が静けさを守ってくれるというのです。自分から壁を作らなくても、静かな暮らしを続けていると、自然に落ち着いた時間が守られていくものなのかもしれません。
この章句が説くこと
禅苔庭空閑寂
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