酔古堂剣掃 / 集倩・衲衣皆松雲に染まる
翠微僧至,衲衣皆染松雲;斗室殘經,石磬半沈蕉雨。
新字:翠微僧至,衲衣皆染松雲;斗室残経,石磬半沈蕉雨。
書き下し
翠微より僧至れば、衲衣皆松雲に染まる。 斗室に經を殘せば、石磬半ば蕉雨に沈む。
現代語訳
緑深い山の中腹から僧がやってくると、その衣はすっかり松と雲の色に染まっています。狭い部屋で読みかけの経を置くと、石の磬の音は芭蕉に降る雨の音に半ば沈んでしまいます。
解説
山寺の僧のたたずまいを、色と音で描いた一則です。翠微は山の中腹の青々としたあたり、衲衣は僧が着るつぎはぎの衣です。山から下りてきた僧の衣が松と雲に染まっているという表現で、長く山にこもって修行してきた人の清らかさを伝えています。斗室は一斗ますほどの狭い部屋、残経は読みかけの経です。石磬は石で作った打楽器で、読経の区切りに打ち鳴らします。その澄んだ音が芭蕉の葉を打つ雨音に溶け込んでいく様子に、静けさがいっそう深まります。住む場所や過ごす時間は、知らず知らずのうちにその人の雰囲気をつくっていくものです。自分が日々どんな場所で何に囲まれているかを、ときどき見直してみたくなります。
この章句が説くこと
禅山寺雨音清寂風雅
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