酔古堂剣掃 / 集倩・榆莢を拾ひ來たる
舞罷纏頭何所贈,折得松釵;飲余酒債莫能償,拾來榆莢。
新字:舞罷纏頭何所贈,折得松釵;飲余酒債莫能償,拾来榆莢。
書き下し
舞罷みて纏頭何の贈る所ぞ、松釵を折り得たり。 飲み余りて酒債償ふ能はず、榆莢を拾ひ來たる。
現代語訳
舞が終わって、祝儀には何を贈ろうか。松の葉のかんざしを折り取ってきました。飲み終えても酒代の借りは払えないので、楡の実を拾ってきました。
解説
お金のない風流人のしゃれた贈り物を描いた、ユーモアのある一則です。纏頭はもともと舞い手に褒美として錦などを頭に巻いてやったことから、芸人への祝儀を意味するようになった言葉です。松釵は二本一組になった松の葉で、その形がかんざしに似ているのでこう言います。榆莢は楡の実で、丸く平たい形が銅銭に似ているので楡銭とも呼ばれます。つまり、祝儀にはかんざしの代わりに松葉を、酒代には銭の代わりに楡の実を差し出すという、見立ての洒落なのです。酒債は酒の借金のことで、杜甫の詩にも、酒の借りは行く先々にあると詠まれています。貧しくても機知と風雅で乗り切ろうとする姿は、どこか微笑ましいものです。高価な贈り物でなくとも、気の利いた心遣いが人を喜ばせることを思い出させてくれます。
この章句が説くこと
諧謔見立て清貧飲酒風雅
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