酔古堂剣掃 / 集倩・幾回か春衣を典す
綠葉斜披,桃葉渡頭,一片弄殘秋月;青簾高掛,杏花村裏,幾回典卻春衣。
新字:緑葉斜披,桃葉渡頭,一片弄残秋月;青簾高掛,杏花村裏,幾回典却春衣。
書き下し
綠葉斜めに披く、桃葉渡頭、一片弄び殘す秋月。 青簾高く掛かる、杏花村裏、幾回か典し卻く春衣。
現代語訳
緑の葉が斜めに垂れかかる桃葉渡の渡し場で、ひとひらの秋の月を心ゆくまで楽しみ尽くします。青い酒旗が高く掛かる杏花村の中で、何度春の衣を質に入れて酒に替えたことでしょう。
解説
秋と春、渡し場と酒の村という二つの場面を、名高い地名と詩句で彩った一則です。桃葉渡は今の南京にあった渡し場で、東晋の王献之が愛妾の桃葉を迎えるために歌を作ったという話にちなむ名です。杏花村は唐の杜牧の「清明」の詩に、牧童遥かに指さす杏花村とある酒屋の村として知られます。青簾は酒屋の目印に掲げる青い旗です。典却春衣は杜甫の「曲江」に、朝廷から帰ると毎日春の衣を質に入れて酒を買う、とあるのを踏まえています。月を愛で、酒のために衣まで手放すという、いかにも文人らしい風流の姿が描かれています。無理をしてまで楽しみを追うことを勧めるわけではありませんが、心から好きなものに打ち込む情熱には、どこか憎めない魅力があるものです。
この章句が説くこと
飲酒月詩風雅名所
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