酔古堂剣掃 / 集倩・月は霜よりも白し
蓬窗夜啟,月白於霜,漁火沙汀,寒星如聚。忘卻客於作楚,但欣煙水留人。
新字:蓬窗夜啓,月白於霜,漁火沙汀,寒星如聚。忘却客於作楚,但欣煙水留人。
書き下し
蓬窗夜啟けば、月は霜よりも白く、漁火沙汀に、寒星聚まるが如し。 客の楚を作すに於けるを忘卻し、但だ煙水の人を留むるを欣ぶ。
現代語訳
舟の苫の窓を夜に開けると、月は霜よりも白く、砂の中州に灯る漁火は、冷たい星が寄り集まっているかのようです。旅人としてのつらさも忘れ、ただもやに煙る水辺が自分を引き留めてくれるのを喜びます。
解説
舟旅の夜の美しさが、旅の憂いを忘れさせるという一則です。蓬窓は苫ぶきの舟の窓、または粗末な家の窓です。月白於霜は、霜よりも白い月の光という冴えた比喩で、秋冬の夜の冷たく澄んだ空気を伝えます。沙汀は砂の中州、漁火はいさり火です。点々と灯る漁火を、寒空に寄り集まった星にたとえた表現は、唐の張継の「楓橋夜泊」の江楓漁火を思わせる旅情に満ちています。作楚は、苦しみ悩むことを言い、旅の身の心細さやつらさを指しています。ふつうなら旅先の夜は寂しく心細いものですが、この美しい景色が旅人を引き留め、かえって喜びに変えてくれるのです。旅や慣れない土地での心細さも、その場所ならではの美しさに目を向けると、少し和らぐものではないでしょうか。
この章句が説くこと
旅月夜景舟遊旅情
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