酔古堂剣掃 / 集倩・小窗の幽致
石上藤蘿,墻頭薛荔,小窗幽致,絕勝深山,加以明月清風,物外之情,盡堪閑適。
新字:石上藤蘿,墻頭薛荔,小窗幽致,絶勝深山,加以明月清風,物外之情,尽堪閑適。
書き下し
石上の藤蘿、墻頭の薛荔、小窗の幽致、絕えて深山に勝る、加ふるに明月清風を以てすれば、物外の情、盡く閑適に堪ふ。
現代語訳
石の上をはう藤やつた、塀の上に茂るまさきのかずら、小さな窓から見えるその奥ゆかしい趣は、深い山にもはるかにまさります。そこに明るい月と清らかな風が加われば、俗世を離れた心持ちは、すべてのどかに楽しむのにふさわしいものになります。
解説
小さな窓から見える身近な景色が、深山にも勝るという一則です。藤蘿は藤やつたなどのつる草、薛荔はつる性の植物で、『楚辞』にも香草として登場し、隠者の住まいを彩るものとされます。石の上や塀の上にからみつくつる草という、ごくありふれた景色を、小さな窓越しに眺めると、そこに幽致、つまり奥ゆかしく静かな趣が生まれます。絶勝深山は、深い山奥にもはるかにまさるという強い言い方で、わざわざ遠くの名山に行かなくても、身近に十分な美しさがあると主張しています。物外之情は、俗世の外にある心、世事を超えた気持ちのことです。都会の小さな部屋でも、窓辺に植物を置き、月と風を招き入れれば、十分に心の隠れ家になるということを教えてくれます。
この章句が説くこと
閑適住まい自然隠逸月
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