酔古堂剣掃 / 集素・立つべく臥すべく坐すべく吟ずべし
窗前落月,戶外垂蘿;石畔草根,橋頭樹影;可立可臥,可坐可吟。
新字:窗前落月,戸外垂蘿;石畔草根,橋頭樹影;可立可臥,可坐可吟。
書き下し
窗前の落月、戶外の垂蘿、石畔の草根、橋頭の樹影、 立つべく臥すべく、坐すべく吟ずべし。
現代語訳
窓の前に沈みかけた月、戸口の外に垂れ下がるつたかずら、石のほとりの草の根元、橋のたもとの木の影。立ってもよし、寝ころんでもよし、座ってもよし、詩を吟じてもよいのです。
解説
身の回りのささやかな景色の中で、どんな姿勢でも楽しめる自由さを描いた一則です。落月は西に傾いた月、垂蘿は垂れ下がるつる草です。草根は草の根もと、橋頭は橋のたもとです。四つの景色はどれも、特別な名所ではなく、住まいの周りにあるありふれた場所です。そこで立つも臥すも、座るも吟じるも思いのままというのは、決まった作法や目的なしに、その場に身を任せる楽しみ方です。何かのために景色を見るのではなく、ただそこに居ることを楽しむ。予定や目的でいっぱいの日々の中で、ときには目的のない時間を過ごすことの大切さを思い出させてくれます。
この章句が説くこと
閑適自然自由月隠逸
関連する章句
-
『酔古堂剣掃』集素・燈下に花を玩び簾內に月を看る燈下に花を玩び、簾內に月を看、雨後に景を觀、醉裏に詩を題し、夢中に書聲を聞く、皆別趣有り。
-
『酔古堂剣掃』集倩・地に席して小酌す一軒の明月、花影參差として、地に席して便ち小酌に宜し。 十里の青山、鳥聲斷續として、春を尋ねて幾度か長吟す。
-
『酔古堂剣掃』集素・壁上の一琴常に挂く窗前の獨榻頻りに移すは、夜月に親しまんが為なり。 壁上の一琴常に挂くるは、時に天風に拂はしむ。
-
『酔古堂剣掃』集韻・徑を掃ひて清風を迎ふ徑を掃ひて清風を迎へ、臺に登りて明月を邀ふ。琴觴の餘、間ふるに歌詠を以てし、止だ鳥語花香のみ、吾が几榻に來たるを許すのみ。
-
『酔古堂剣掃』集倩・小窗の幽致石上の藤蘿、墻頭の薛荔、小窗の幽致、絕えて深山に勝る、加ふるに明月清風を以てすれば、物外の情、盡く閑適に堪ふ。
-
『酔古堂剣掃』集倩・半簾の明月人を窺ふ茅屋竹窗、一榻の清風客を邀へ、 茶爐藥竈、半簾の明月人を窺ふ。