酔古堂剣掃 / 集倩・半醒半醉
花事乍開乍落,月色乍陰乍晴,興未闌,躊躇搔首;詩篇半拙半工,酒態半醒半醉,身方健,潦倒放懷。
新字:花事乍開乍落,月色乍陰乍晴,興未闌,躊躇搔首;詩篇半拙半工,酒態半醒半酔,身方健,潦倒放懐。
書き下し
花事は乍ち開き乍ち落ち、月色は乍ち陰り乍ち晴る、興未だ闌ならず、躊躇して首を搔く。 詩篇は半ば拙く半ば工みに、酒態は半ば醒め半ば醉ふ、身方に健やかにして、潦倒して懷を放つ。
現代語訳
花は咲いたかと思えばすぐ散り、月の光は陰ったかと思えばすぐ晴れる。興はまだ尽きず、ためらいながら頭をかきます。詩は半ば下手で半ば上手、酒の酔い方は半ば醒めて半ば酔っている。体はちょうど元気なので、なりふりかまわず思いを解き放ちます。
解説
移ろいやすい自然と、中途半端な自分の姿を、そのまま楽しむ心を描いた一則です。乍は、たちまち、急に、という意味で、乍開乍落、乍陰乍晴と重ねることで、花や月の定まらなさを表しています。興はまだ尽きないのに花も月も思うようにならず、頭をかいて躊躇する姿には、どこかユーモアがあります。後半では、自分の詩も半分は拙く半分は巧み、酔いも半分醒めて半分酔っていると、完全ではない自分を正直に認めます。潦倒は落ちぶれてだらしないさまですが、ここでは体裁にこだわらず気ままにふるまうことを言います。完璧でなくても、体が元気なうちは思い切り楽しもうという、明るい開き直りが感じられます。何ごとも半分くらいの出来で楽しめる心の余裕は、今の私たちにも必要なものでしょう。
この章句が説くこと
閑適花月飲酒不完全
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