酔古堂剣掃 / 集倩・藤を以て骨と為す
木枕傲,石枕冷,瓦枕粗,竹枕鳴。以藤為骨,以漆為膚,其背圓而滑,其額方而通。此蒙莊之蝶庵,華陽之睡幾。
新字:木枕傲,石枕冷,瓦枕粗,竹枕鳴。以藤為骨,以漆為膚,其背円而滑,其額方而通。此蒙荘之蝶庵,華陽之睡幾。
書き下し
木枕は傲り、石枕は冷やかに、瓦枕は粗く、竹枕は鳴る。 藤を以て骨と為し、漆を以て膚と為す、其の背は圓くして滑らかに、其の額は方にして通ず。 此れ蒙莊の蝶庵、華陽の睡幾なり。
現代語訳
木の枕は硬くて頭になじまず、石の枕は冷たく、瓦の枕は粗く、竹の枕はきしんで音がします。藤を骨組みにし、漆を表面に塗った枕は、背は丸くてなめらか、額の当たるところは四角くて風が通ります。これこそ荘子が蝶の夢を見た庵であり、陶弘景がまどろんだ寝台というべきものです。
解説
理想の枕を、他の枕の欠点と比べながらたたえた一則です。木枕は硬く、石枕は冷たく、瓦枕は肌ざわりが粗く、竹枕はきしむと、それぞれの欠点を一字で言い当てています。傲は、ここでは硬くて頭になじまないさまと読みました。これに対して、藤で骨組みを作り漆を塗った枕は、なめらかで風通しもよく、最上だと言います。蒙荘は蒙の地の人である荘子のことで、夢で蝶になった胡蝶の夢の話を踏まえ、この枕なら荘子のような夢が見られるという洒落です。華陽は華陽隠居と号した南朝梁の陶弘景のことで、山中で悠々と眠る隠者の姿を重ねています。枕一つにもこれほどこだわり、そこに哲学者や隠者の夢を重ねる遊び心が楽しい一則です。よい眠りのための道具選びは、今も暮らしの質を左右する大事な工夫です。
この章句が説くこと
枕睡眠荘子道具閑適
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