酔古堂剣掃 / 集靈・一草堂を結ぶ
結一草堂,南洞庭月,北蛾眉雪,東泰岱松,西瀟湘竹;中具晉高僧支法,八尺沉香床。浴罷溫泉,投床鼾睡,以此避暑,詎不樂也?
新字:結一草堂,南洞庭月,北蛾眉雪,東泰岱松,西瀟湘竹;中具晋高僧支法,八尺沈香床。浴罷温泉,投床鼾睡,以此避暑,詎不楽也?
書き下し
一草堂を結び、南は洞庭の月、北は蛾眉の雪、東は泰岱の松、西は瀟湘の竹。中に晉の高僧支法の八尺の沉香の床を具ふ。溫泉に浴し罷りて、床に投じて鼾睡す、此れを以て暑を避く、詎ぞ樂しからざらんや。
現代語訳
一軒の草堂を建て、南には洞庭湖の月、北には峨眉山の雪、東には泰山の松、西には瀟湘の竹を配します。中には晋の高僧支法が用いたという八尺の沈香の寝台をそなえます。温泉に入り終えたら寝台に身を投げていびきをかいて眠る。こうして暑さを避けるなら、どうして楽しくないことがありましょうか。
解説
天下の名勝を四方に配した、空想の避暑の庵を描いた一則です。洞庭は湖南の大きな湖、蛾眉は四川の峨眉山、泰岱は山東の泰山、瀟湘は湖南の二つの川で、どれも詩画に名高い景勝地です。現実には一か所に集められない景色を、東西南北に並べるところに、文人の遊び心があります。支法は晋代の僧と思われますが、どの人物を指すかは定かでなく、沈香の寝台は香木で作った贅沢な調度です。温泉のあとに高いびきで眠るという結びが、壮大な空想を一気に身近なものにしています。理想の住まいを思い描くことは、それだけで暑さや疲れを忘れさせる小さな旅になります。
この章句が説くこと
風雅閑適山水避暑空想
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