酔古堂剣掃 / 集素・毛穎君をして枕に就きて掌記せしむ
久坐神疲,焚香仰臥;偶得佳句,即令毛穎君就枕掌記,不則展轉失去。
新字:久坐神疲,焚香仰臥;偶得佳句,即令毛穎君就枕掌記,不則展転失去。
書き下し
久しく坐して神疲るれば、香を焚きて仰臥す。 偶たま佳句を得れば、即ち毛穎君をして枕に就きて掌記せしむ、不らずんば則ち展轉して失ひ去る。
現代語訳
長く座って心が疲れたら、香を焚いて仰向けに寝ころびます。ふと良い句が浮かんだら、すぐに毛穎君(筆)に枕元で書き留めさせます。そうしないと、寝返りを打つうちに忘れてしまいます。
解説
着想を逃さない工夫を、ユーモアを交えて語った一則です。毛穎君は筆のことで、唐の韓愈が筆を擬人化して書いた戯文『毛穎伝』に由来します。掌記は記録を担当することで、筆を書記役の役人に見立てています。展転は寝返りを打つことです。長く座って疲れたら香を焚いて横になるという休み方も、休んでいるときほど良い考えが浮かぶという経験も、今の私たちと少しも変わりません。そして、浮かんだ考えはすぐに書き留めないと消えてしまうというのも、誰もが覚えのある実感です。枕元に筆記具を置くという小さな習慣が、大切な着想を守ってくれます。
この章句が説くこと
着想記録読書休息文房
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