酔古堂剣掃 / 集情・梨花の深院には自ら風多し
杏子輕紗初脫暖,梨花深院自多風。
新字:杏子軽紗初脱暖,梨花深院自多風。
書き下し
杏子の輕紗に初めて暖を脫し、梨花の深院には自ら風多し。
現代語訳
杏色の軽やかな薄絹をまとって、ようやく暖かな冬着を脱ぎ、梨の花の咲く奥の庭には、おのずと風が多く吹きます。
解説
晩春の閨の情景を、衣と庭で描いた七言の対句です。杏子は杏の実の色で、淡い黄赤色の薄絹の衣を言うとみられます。暖を脱すは、冬の厚い衣を脱いで軽装になることです。梨花の深院は、白い梨の花の咲く奥まった中庭で、宋の晏殊の詩に「梨花院落溶溶たる月」とあるように、閨の舞台としてしばしば詠まれました。軽やかな衣替えの喜びと、花を散らす風の多さとを並べ、春の華やぎの裏にある移ろいの寂しさをほのめかしています。季節の変わり目には、心もまた揺れやすくなります。衣替えのような小さな節目に、心の状態を見つめ直すのもよいでしょう。
この章句が説くこと
晩春梨花衣替え季節詩情
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