酔古堂剣掃 / 集倩・門を閉ぢて野史を聽く
問客寫藥方,非關多病;閉門聽野史,只為偷閑。
新字:問客写薬方,非関多病;閉門聴野史,只為偸閑。
書き下し
客に問ひて藥方を寫すは、多病に關はるに非ず。 門を閉ぢて野史を聽くは、只だ閑を偸まんが為なり。
現代語訳
客に尋ねて薬の処方を書き写すのは、病気がちだからではありません。門を閉ざして民間の歴史話を聞くのは、ただ暇を盗みたいからです。
解説
一見意味のなさそうな行いに、閑を楽しむ心を込めた一則です。前半は、客に薬の処方を尋ねて書き写すけれど、別に病気が多いわけではないと言います。薬方を集めるのは、知識を楽しむ文人の趣味の一つで、実用よりも好奇心から出たものでしょう。後半の野史は、正史に対して民間で語り伝えられた歴史や逸話のことです。門を閉ざしてそれを聞くのは、学問のためというより、ただ忙しさの合間から閑を盗み出したいからだ、と正直に言っています。偸閑はわずかな暇を盗むようにして楽しむことで、唐の詩にもよく見える言葉です。役に立つかどうかにとらわれず、好奇心のままに知識を楽しむ時間は、心のゆとりそのものです。目的のない学びの楽しさを思い出させてくれる句です。
この章句が説くこと
閑適好奇心読書偸閑隠逸
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