酔古堂剣掃 / 集倩・趣を莊村に得
春夏之交,散行麥野;秋冬之際,微醉稻場。欣看麥浪之翻銀,稱翠直侵衣帶;快睹稻香之覆地,新醅欲溢尊罍。每來得趣於莊村,寧去置身於草野。
新字:春夏之交,散行麦野;秋冬之際,微酔稲場。欣看麦浪之翻銀,称翠直侵衣帯;快睹稲香之覆地,新醅欲溢尊罍。毎来得趣於荘村,寧去置身於草野。
書き下し
春夏の交、散じて麥野を行き、秋冬の際、微かに稻場に醉ふ。 欣んで麥浪の銀を翻すを看れば、稱翠直ちに衣帶を侵し、快く稻香の地を覆ふを睹れば、新醅尊罍に溢れんと欲す。 每に來たりて趣を莊村に得、寧ろ去りて身を草野に置かん。
現代語訳
春から夏に移るころには、ぶらぶらと麦畑を歩き、秋から冬に移るころには、稲の脱穀場でほろ酔いになります。麦の穂波が銀色に翻るのを喜んで眺めていると、その青々とした色が衣の帯にまで迫ってくるようです。稲の香りが大地を覆っているのを心地よく見ていると、新しくかもした酒が樽からあふれんばかりです。いつも村にやってきてはその趣を楽しんでいます。いっそ世を去って、この身を田野に置いて暮らしたいものです。
解説
農村の四季の豊かさを、麦と稲の二つの収穫に託して描いた一則です。春夏の交には麦が実り、秋冬の際には稲の収穫を終えた稲場で新酒が振る舞われます。麦浪翻銀は、風に揺れる麦の穂が波のようにうねり、光を受けて銀色に輝く様子です。稱翠の二字は意味の取りにくいところですが、麦の青々とした色と解して訳しました。新醅は新しく醸した酒、尊罍は酒樽のことです。文人でありながら、農民の実りの喜びを我がことのように楽しんでいる姿がうかがえます。最後の句には、都会の俗事を離れて田舎で暮らしたいという、隠逸への憧れが込められています。季節ごとに田畑の景色を眺め、その土地の新しい実りを味わうことは、今でも心を満たしてくれる楽しみです。
この章句が説くこと
田園季節収穫隠逸閑適
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