酔古堂剣掃 / 集景・流水を聽き激湍を看る
長松怪石,去墟落不下一二十里。鳥徑緣崖,涉水於草莽間。數四左右,兩三家相望,雞犬之聲相聞。竹籬草舍,燕處其間,蘭菊藝之,霜月春風,日有餘思。臨水時種桃梅,兒童婢仆皆布衣短褐,以給薪水,釀村酒而飲之。案有詩書、莊周、太玄、楚辭、黃庭、陰符、楞嚴、圓覺,數十卷而已。杖藜躡屐,往來窮谷大川,聽流水,看激湍,鑒澄潭,步危橋,坐茂樹,探幽壑,升高峰,不亦樂乎!
新字:長松怪石,去墟落不下一二十里。鳥径縁崖,渉水於草莽間。数四左右,両三家相望,鶏犬之声相聞。竹籬草舎,燕処其間,蘭菊芸之,霜月春風,日有余思。臨水時種桃梅,児童婢仆皆布衣短褐,以給薪水,醸村酒而飲之。案有詩書、荘周、太玄、楚辞、黄庭、陰符、楞厳、円覚,数十巻而已。杖藜躡屐,往来窮谷大川,聴流水,看激湍,鑒澄潭,歩危橋,坐茂樹,探幽壑,升高峰,不亦楽乎!
書き下し
長松怪石、墟落を去ること一二十里を下らず。 鳥徑崖に緣り、水を草莽の間に涉る。 數四左右、兩三家相望み、雞犬の聲相聞ゆ。 竹籬草舍、其の間に燕處し、蘭菊之を藝ゑ、霜月春風、日に餘思有り。 水に臨みて時に桃梅を種ゑ、兒童婢仆皆布衣短褐にして、以て薪水を給し、村酒を釀して之を飲む。 案に詩書、莊周、太玄、楚辭、黃庭、陰符、楞嚴、圓覺有り、數十卷のみ。 藜を杖つき屐を躡み、窮谷大川に往來し、流水を聽き、激湍を看、澄潭を鑒み、危橋を步み、茂樹に坐し、幽壑を探り、高峰に升る、亦た樂しからずや。
現代語訳
高い松と奇妙な形の石のある所は、村里から少なくとも十里、二十里は離れています。鳥しか通わないような細道が崖に沿って続き、草むらの間の流れを歩いて渡ります。左右に何度か折れていくと、二、三軒の家が向かい合い、鶏や犬の声が聞こえてきます。竹垣に草ぶきの家を建ててそこでくつろぎ、蘭や菊を植えれば、霜の降りる月夜にも春風の日にも、毎日尽きない思いがあります。水辺にはときどき桃や梅を植え、子どもや召使いはみな木綿の粗末な短い服を着て、薪を拾い水を汲み、村の酒を醸して飲みます。机の上には詩経・書経、荘子、太玄経、楚辞、黄庭経、陰符経、楞厳経、円覚経があり、全部で数十巻にすぎません。藜の杖をつき下駄を履いて、深い谷や大河を行き来し、流れる水の音を聞き、激しい早瀬を眺め、澄んだ淵に姿を映し、危うい橋を渡り、茂った木の下に座り、奥深い谷を探り、高い峰に登る。なんと楽しいことではありませんか。
解説
この章句が説くこと
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『酔古堂剣掃』集景・此れ亦た以て老を娛しましむべし良辰美景、春暖かに秋涼し。 杖を負ひ履を躡み、逍遙して自ら樂しむ。 池に臨みて魚を觀、林を披きて鳥を聽く。 酒一杯を酌み、琴一曲を彈ず。 數刻の樂しみを求め、庶幾はくは常に居りて以て終りを待たん。 室數楹を築き、槿を編みて籬と為し、茅を結びて亭と為す。 三畝を以て竹樹に蔭ひ花果を栽ゑ、二畝に蔬菜を種う。 四壁清曠、諸の有る所を空しくし、山童を蓄へて園に灌ぎ草を剃らしめ、二三の胡床を置きて亭下に著け、書劍を挾みて以て孤寂に伴ひ、琴奕を攜へて以て良友を遲つ、此れ亦た以て老を娛しましむべし。
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『酔古堂剣掃』集景・清くして齒を漱ぐべし密竹雲を軼ぎ、長林日を蔽ふ、淺翠嬌青、煙を籠め濕を惹く。 數椽を其の間に構へ、竹樹を籬と為し、復た垣を葺かず。 中に一泓の流水有り、清くして齒を漱ぐべく、曲りて觴を流すべし。 其の間に放歌すれば、離披蒨郁、神滌はれ意閑かなり。
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『酔古堂剣掃』集素・落葉を煨きて紅爐と為す山房の磬は、綠玉に非ずと雖も、沉明輕清の韻、盡く清歌を節し俗耳を洗ふべし。 山居の樂しみ、頗る冷趣に愜ふ。落葉を煨きて紅爐と為し、況んや暄を岩戶に負ふをや。 土鼓梅を催し、荻灰地を暖む。潛凜以て蕭索たりと雖も、素柯の歲を凌ぐを見る。 同雲流れず、舞雪醉ふが如し。野は曠きに因りて冷やかに舒び、山は靜かなるを以て晦からず。 枯魚懸かる在り、濁酒已に注ぐ。朋徒我に從ひ、寒盟固むべし。 歲暮を天涯に驚かず、即ち是れ纊を孤嶼に挾むなり。
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『酔古堂剣掃』集倩・書を觀るには欄に倚る書を觀るには、宜しく欄に倚りて笛を吹くべく、宜しく香を焚きて靜坐すべく、宜しく麈を揮ひて清談すべし。 江干は帆影に宜しく、山郁は煙嵐に宜しく、院落は楊柳に宜しく、寺觀は松篁に宜しく、溪邊は漁樵に宜しく、鷺鷥に宜しく、花前は娉婷に宜しく、鸚鵡に宜し。 翠霧霏微たるに宜しく、銀河清淺たるに宜しく、萬里雲無く、長空洗ふが如きに宜しく、千林雨過ぎて、叠嶂新たなるが如きに宜しく、高く江天に插むに宜しく、斜めに城郭に連なるに宜しく、窗を開きて海日を眺むるに宜しく、頂を露はして天風に臥すに宜しく、嘯くに宜しく、詠ずるに宜しく、終日棋を敲くに宜しく、酒に宜しく、詩に宜しく、清宵榻に對するに宜し。
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