酔古堂剣掃 / 集素・野人の樂しみ足れり
高枕邱中,逃名世外,耕稼以輸王稅,採樵以奉親顏;新穀既升,田家大洽,肥羜烹以享神,枯魚燔而召友;蓑笠在戶,桔槔空懸,濁酒相命,擊缶長歌,野人之樂足矣。
新字:高枕邱中,逃名世外,耕稼以輸王税,採樵以奉親顔;新穀既升,田家大洽,肥羜烹以享神,枯魚燔而召友;蓑笠在戸,桔槔空懸,濁酒相命,撃缶長歌,野人之楽足矣。
書き下し
枕を邱中に高くし、名を世外に逃れ、耕稼して以て王稅を輸し、採樵して以て親顏を奉ず。 新穀既に升り、田家大いに洽ふ、肥羜烹て以て神に享し、枯魚燔きて友を召く。 蓑笠戶に在り、桔槔空しく懸る、濁酒相命じ、缶を擊ちて長歌す、野人の樂しみ足れり。
現代語訳
丘の中で枕を高くして安らかに眠り、名声から逃れて世の外に暮らします。田を耕して王への税を納め、薪を採って親の顔色をうかがいながら孝養を尽くします。新しい穀物が実ると、農家はおおいに和やかになり、肥えた子羊を煮て神に供え、干し魚を焼いて友を招きます。蓑と笠は戸口に掛かったまま、はねつるべもむなしく吊されています。濁り酒を互いに勧め合い、素焼きの壺を叩いて長く歌います。田舎の人の楽しみはこれで十分です。
解説
収穫の季節を迎えた田園の喜びを描いた一則です。王税を納め、親に孝養を尽くすという務めを果たしたうえでの隠遁であることが強調されています。肥羜は肥えた子羊で、『詩経』小雅の伐木に友を招く宴の料理として出てきます。桔槔は井戸のはねつるべで、農作業が終わって使われていない様子です。缶を撃つは、素焼きの壺を叩いて拍子をとる素朴な歌い方です。果たすべき務めを果たしてこそ、心置きなく楽しめるという順序が大切です。仕事を一区切りつけた後の祝いの席の喜びにも通じます。
この章句が説くこと
田園孝行清貧交友知足
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