酔古堂剣掃 / 集韻・閑かに鶴の浴するを觀る
煙蘿掛月,靜聽猿啼,瀑布飛虹,閑觀鶴浴。
新字:煙蘿掛月,静聴猿啼,瀑布飛虹,閑観鶴浴。
書き下し
煙蘿月を掛け、靜かに猿の啼くを聽き、瀑布虹を飛ばし、閑かに鶴の浴するを觀る。
現代語訳
霞にけむるつたかずらに月がかかり、静かに猿の鳴き声を聴きます。滝が虹を飛ばし、のんびりと鶴が水浴びするのを眺めます。
解説
深山の夜と昼の情景を、聴くことと観ることで対にした一則です。煙蘿は霞にけむるつたかずらで、深山の隠者の住まいを表す言葉です。そこに月がかかる夜、静かに猿の鳴き声に耳を傾けます。猿の声は中国の詩では、物悲しく旅情を誘うものとして詠まれてきました。昼には滝のしぶきに虹が立ち、鶴がゆったりと水浴びをしています。静聴と閑観という言葉の通り、何もせず、ただ耳を傾け、目を向けるだけの時間です。私たちは何かを見聞きするとき、つい意味や役に立つことを求めがちです。ただ静かに聴き、ただゆったりと見る時間を持つと、心の奥が休まっていくでしょう。
この章句が説くこと
自然閑適隠逸静寂山水
関連する章句
-
『酔古堂剣掃』集景・高猿長嘯し屬引淒異なり孤帆落照の中、青山の映帶し、征鴻渚に回り、爭ひ棲み競ひ啄み、水に宿り雲に鳴き、聲夜月に淒しく、秋飆蕭瑟たるを見る、之を聽けば黯然として、遂に一夜の西風をして、寒生じ露白からしむ。 萬山の深き處、一泓の澗水、四周は削壁、石磴嶄巖、叢木蓊郁たり、老猿其の中に穴し、古松屈曲して、高く雲顛を拂ひ、鶴來りて時に其の頂に棲む。 每に晴初霜旦、林寒く澗肅かに、高猿長嘯し、屬引淒異にして、風聲鶴唳、隙嚦として霜に驚く、之を聞けば人をして淒絕せしむ。
-
『酔古堂剣掃』集倩・閑中の滋味晨に起きて窗を推せば、紅雨亂れ飛ぶ、閑花笑ふなり。 綠樹聲有り、閑鳥啼くなり。 煙嵐滅沒す、閑雲度るなり。 藻荇數ふべし、閑池靜かなり。 風細く簾青く、林空しく月印す、閑庭峭なり。 山扉晝も扃せども、剝啄每に閑侶多し。 帖括は人に因れども、几案每に閑編多し。 繡佛長齋、禪心釋諦、而して念ひに閑想多く、語に閑詞多し。 閑中の滋味、洵に樂しむに足るなり。
-
『酔古堂剣掃』集韻・徑を掃ひて清風を迎ふ徑を掃ひて清風を迎へ、臺に登りて明月を邀ふ。琴觴の餘、間ふるに歌詠を以てし、止だ鳥語花香のみ、吾が几榻に來たるを許すのみ。
-
『酔古堂剣掃』集倩・孤鶴に對して高眠す沙村の竹色、明月霜の如し、幽人を攜へ藜を杖つきて散步す。 石屋の松陰、白雲雪に似たり、孤鶴に對して榻を掃ひて高眠す。
-
『酔古堂剣掃』集韻・理亂を聞かざるに置く外慕を屏絕し、長林に偃息し、理亂を聞かざるに置き、清閑に托して自ら佚す。松軒竹塢、酒甕茶鐺、山月溪雲、農蓑漁罟。
-
『酔古堂剣掃』集景・茶煙飄りて鶴避く夕陽の林際、蕉葉地に墮ちて鹿眠り、點雪の爐頭、茶煙飄りて鶴避く。