酔古堂剣掃 / 集景・一江の春水行舟を送る
細草微風,兩岸晚山迎短桌;垂楊殘月,一江春水送行舟。
新字:細草微風,両岸晩山迎短桌;垂楊残月,一江春水送行舟。
書き下し
細草微風、兩岸の晚山短桌を迎へ、垂楊殘月、一江の春水行舟を送る。
現代語訳
細い草にかすかな風がそよぎ、両岸の夕暮れの山が、舟の上の小さな卓を迎えます。垂れた柳に残りの月がかかり、川いっぱいの春の水が、ゆく舟を送っていきます。
解説
川を下る舟旅の情景を、夕暮れと明け方の二つの時間で描いた対句です。細草微風は、唐の杜甫の旅夜書懷の冒頭、細草微風の岸を思わせる言葉です。前の句では、夕暮れの山々が、舟に置いた小さな卓の方へ迫ってくるように見えます。後の句の殘月は明け方に残る月で、柳の枝越しにその月を見ながら、春の水に舟が運ばれていきます。山が迎え、水が送るという言い方で、旅人の方ではなく景色の方が動いているかのように描かれています。旅先で景色が自分を迎え送ってくれると感じられたら、移動の時間もそれ自体が楽しみになるでしょう。
この章句が説くこと
自然風雅旅春川
関連する章句
-
『酔古堂剣掃』集景・路は杏花の酒舍に接す曲徑煙深く、路は杏花の酒舍に接す。 澄江日落ちて、門は楊柳の漁家に通ず。
-
『酔古堂剣掃』集倩・塵事を秋水蘆花に付す秋風に纜を解けば、極目の蘆葦、白露江に橫たはり、情景淒絕たり。 孤雁驚き飛び、秋色遠近、舟を泊めて臥して聽き、酒を沽ひて盧を呼ぶ、一切の塵事、都て秋水蘆花に付す。
-
『酔古堂剣掃』集景・江清くして月人に近し野曠くして天樹に低れ、江清くして月人に近し。
-
『酔古堂剣掃』集景・飛花の窗を度るを玩ぶ飛花の窗を度るを玩び、春風の柳に入るを看る、忽ち翔飛して暫く隱れ、時に空を淩ぎて更に飏る。
-
『酔古堂剣掃』集韻・草色溪橋に遍し草色溪橋に遍くして、蜻蜓を醉はしめ得て春翅軟らかなり。花風驛路に通じて、蝴蝶を迷はし來たりて曉魂香し。
-
『酔古堂剣掃』集素・細雨夜窗の棋暖風春座の酒、細雨夜窗の棋。