酔古堂剣掃 / 集景・爐を擁して芋を煨く
四林皆雪,登眺時見絮起風中,千峰堆玉,鴉翻城角,萬壑鋪銀。無樹飄花,片片繪子瞻之壁;不妝散粉,點點糝原憲之羹。飛霰入林,回風折竹,徘徊凝覽,以發奇思。畫冒雪出雲之勢,呼松醪茗飲之景。擁爐煨芋,欣然一飽,隨作雪景一幅,以寄僧賞。
新字:四林皆雪,登眺時見絮起風中,千峰堆玉,鴉翻城角,万壑鋪銀。無樹飄花,片片絵子瞻之壁;不妝散粉,点点糝原憲之羹。飛霰入林,回風折竹,徘徊凝覧,以発奇思。画冒雪出雲之勢,呼松醪茗飲之景。擁炉煨芋,欣然一飽,随作雪景一幅,以寄僧賞。
書き下し
四林皆雪、登眺する時、絮の風中に起り、千峰玉を堆み、鴉城角に翻り、萬壑銀を鋪くを見る。 樹無くして花を飄し、片片子瞻の壁に繪き、妝はずして粉を散じ、點點原憲の羹に糝ず。 飛霰林に入り、回風竹を折り、徘徊凝覽し、以て奇思を發す。 雪を冒し雲を出づるの勢、松醪茗飲を呼ぶの景を畫く。 爐を擁して芋を煨き、欣然として一飽し、隨ひて雪景一幅を作り、以て僧に寄せて賞せしむ。
現代語訳
四方の林がすべて雪に覆われ、高い所に登って眺めると、柳の綿のような雪が風の中に舞い上がり、無数の峰には玉が積み重なり、烏が城の隅でひるがえり、あらゆる谷に銀が敷きつめられているのが見えます。木もないのに花が舞い、一片一片が蘇子瞻(宋の蘇軾)の雪堂の壁を描き、化粧もしないのに白粉が散って、一粒一粒が原憲(孔子の弟子)の粗末な汁物に混じります。あられが林に飛び込み、つむじ風が竹を折り、歩きまわってはじっと見つめ、奇抜な思いつきを得ます。雪をついて雲から現れ出る山の勢いや、松の酒や茶を持って来いと呼ぶ情景を描きます。炉を抱えて芋を灰の中で焼き、うれしく腹を満たして、そのまま雪景色を一幅描き、僧に送って鑑賞してもらいます。
解説
雪の日の眺めから、絵を描いて友に贈るまでを描いた一則です。絮の風中に起りは、晋の謝道韞が雪を柳の綿が風に舞うのにたとえた名句を踏まえています。子瞻の壁は、宋の蘇軾が黄州で雪の日に建てた雪堂の四方の壁に、雪景色を描いたという故事によります。原憲の羹は、孔子の弟子原憲が極貧の中でも道を楽しんだ話にちなみ、粗末な汁物に雪が混じるという清貧の情景です。飛霰は空を飛ぶあられ、煨は灰の中で焼くことです。雪を眺め、詩や絵の着想を得て、炉端で芋を焼いて腹を満たし、描いた絵を僧に贈るという一連の流れに、雪の日を存分に楽しむ文人の暮らしぶりがうかがえます。
この章句が説くこと
自然風雅冬清貧絵画
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