酔古堂剣掃 / 集倩・月色橋に滿ちて人影來たる
馬蹄入樹鳥夢墜,月色滿橋人影來。
新字:馬蹄入樹鳥夢墜,月色満橋人影来。
書き下し
馬蹄樹に入りて鳥夢墜ち、 月色橋に滿ちて人影來たる。
現代語訳
馬のひづめの音が木立に入ると、眠っていた鳥の夢が落ちて目を覚まし、月の光が橋いっぱいに満ちると、人の影がこちらへやってきます。
解説
夜道の情景を、音と光で描いた詩の一聯です。前半では、馬に乗って林に入っていくと、そのひづめの音に驚いて、木で眠っていた鳥が目を覚まします。それを鳥の夢が墜ちると表現したところに、この句の妙味があります。夢という目に見えないものが、落ちるという具体的な動きを持っているのです。後半では、月の光に満たされた橋の上を、人影がこちらへ近づいてきます。誰が来るのかは語られず、待ち人か、見知らぬ旅人か、読む人の想像にゆだねられています。静まり返った夜に、音と影だけが動くことで、かえって夜の深さと美しさが際立っています。夜の散歩で、音や影に耳と目を澄ませてみると、昼には気づかない世界が見えてくるものです。
この章句が説くこと
夜景月詩情景風雅
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