酔古堂剣掃 / 集奇・驟雨橫に飛ぶ
浮雲回度,開月影而彎環;驟雨橫飛,挾星精而搖動。
新字:浮雲回度,開月影而彎環;驟雨横飛,挟星精而揺動。
書き下し
浮雲回り度りて、月影を開きて彎環たり。 驟雨橫に飛びて、星精を挾みて搖動す。
現代語訳
浮き雲がめぐり渡って、月の光を開き、弓なりに輪を描きます。にわか雨が横なぐりに飛んで、星の光を挟み込んで揺れ動きます。
解説
夜空の雲と雨の動きを、月と星の光とともに描いた一則です。前の句は、流れる雲が行き交う中から月がのぞき、その光が弓なりに曲がって見える様子です。彎環は、弓のように曲がって輪になっていることを言います。後の句は、横なぐりの雨が降る中に、星の光がちらちらと揺れて見える様子です。星精は星の光、星の精気のことです。雲と月、雨と星という組み合わせで、動くものと光るものとが重なり合う一瞬の景色を切り取っています。天気が崩れる夜は、ふつう鬱陶しく感じられるものですが、見方を変えれば、このように変化に富んだ美しい眺めにもなります。空を見上げる余裕を思い出させてくれる句です。
この章句が説くこと
風景夜空自然風雅変化
関連する章句
-
『酔古堂剣掃』集景・霽色一新す山を雨後に看れば、霽色一新し、便ち青山の倍ます秀づるを覺ゆ。 月を江中に玩べば、波光千頃、頓に明月をして輝きを增さしむ。
-
『酔古堂剣掃』集豪・夜深くして花は睡る雲破れて月は窺ふ花の好き處、夜深くして花は睡る月明の中。
-
『酔古堂剣掃』集景・愁樂交も集まる雲晴れて叆叆、石楚流滋、狂飆忽ち卷き、珠雨淋漓たり。 黃昏孤燈明滅し、山房清曠にして、意自ら悠然たり。 夜半松濤颶に驚き、蕉園瑯を鳴らし、窾坎の聲、疏密間ま發し、愁樂交も集まり、幽懷を寫すに足る。
-
『酔古堂剣掃』集素・明月を天衢に步む明月を天衢に步み、錦雲を江閣に覽る。
-
『酔古堂剣掃』集景・松風夜秋を帶ぶ潭水寒くして月を生じ、松風夜秋を帶ぶ。
-
『酔古堂剣掃』集奇・萬象を晴初に照らす萬象を晴初に照らし、 寥天を日餘に散ず。