酔古堂剣掃 / 集倩・花を待するに客を以てす
園花按時開放,因即其佳稱待之以客。梅花索笑客,桃花銷恨客,杏花倚雲客,水仙淩波客,牡丹酣酒客,芍藥占春客,萱草忘憂客,蓮花禪社客,葵花丹心客,海棠昌州客,桂花青雲客,菊花招隱客,蘭花幽谷客,酴醾清敘客,臘梅遠寄客。須是身閑,方可稱為主人。
新字:園花按時開放,因即其佳称待之以客。梅花索笑客,桃花銷恨客,杏花倚雲客,水仙淩波客,牡丹酣酒客,芍薬占春客,萱草忘憂客,蓮花禅社客,葵花丹心客,海棠昌州客,桂花青雲客,菊花招隠客,蘭花幽谷客,酴醾清敘客,臘梅遠寄客。須是身閑,方可称為主人。
書き下し
園花時を按じて開放すれば、因りて其の佳稱に即きて之を待するに客を以てす。 梅花は索笑客、桃花は銷恨客、杏花は倚雲客、水仙は淩波客、牡丹は酣酒客、芍藥は占春客、萱草は忘憂客、蓮花は禪社客、葵花は丹心客、海棠は昌州客、桂花は青雲客、菊花は招隱客、蘭花は幽谷客、酴醾は清敘客、臘梅は遠寄客。 須らく是れ身閑にして、方に稱して主人と為すべし。
現代語訳
庭の花が季節に従って咲いたら、それぞれにふさわしい美しい呼び名をつけて、客としてもてなします。梅は笑顔を求める客、桃は恨みを消す客、杏は雲に寄り添う客、水仙は波の上を歩む客、牡丹は酒に酔う客、芍薬は春を占める客、萱草は憂いを忘れる客、蓮は禅の集いの客、葵は真心の客、海棠は昌州の客、桂は青雲の客、菊は隠者を招く客、蘭は奥深い谷の客、酴醾は清らかに語らう客、蝋梅は遠くへ贈る客です。ただし、自分の身が閑でなければ、これらの客の主人と名乗ることはできません。
解説
庭の花々を客に見立て、一つ一つに雅な呼び名を与えた一則です。こうした見立ては宋代以来の文人の遊びで、花の性格や故事にちなんで名づけられています。たとえば水仙の淩波は、魏の曹植が洛水の女神を波の上を歩むと描いた「洛神賦」から、萱草の忘憂は、この草が憂いを忘れさせるとされたことから来ています。菊の招隠は陶淵明が菊を愛した隠者だったこと、臘梅の遠寄は、梅の枝を遠くの友に贈った南朝の故事を思わせます。海棠の昌州は、昌州の海棠だけは香りがあると言われたことによるとされます。最後に、忙しく暇のない人は、この花の客たちを迎える主人にはなれないと結びます。花を客として迎えるには、まず自分に迎えるだけの閑が必要だというのは、今の暮らしにも通じる耳の痛い一言です。
この章句が説くこと
花見立て閑適風雅季節
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