酔古堂剣掃 / 集素・閒にして水竹雲山の主と為る
殘醺供白醉,傲他附熱之蛾;一枕餘黑甜,輸卻分香之蝶。閒為水竹雲山主,靜得風花雪月權。
新字:残醺供白酔,傲他附熱之蛾;一枕余黒甜,輸却分香之蝶。閒為水竹雲山主,静得風花雪月権。
書き下し
殘醺白醉に供し、他の熱に附くの蛾に傲る。 一枕黑甜を餘し、卻つて香を分かつの蝶を輸かす。 閒にして水竹雲山の主と為り、靜かにして風花雪月の權を得。
現代語訳
残った酔いで白昼の酔いを楽しみ、熱い火に群がる蛾のように権勢に寄りつく連中を見下します。一眠りの熟睡の心地よさは、花の香りを分け合う蝶さえ負かしてしまいます。閑であればこそ水や竹、雲や山の主人となり、静かであればこそ風や花、雪や月を思うままにする権利を得るのです。
解説
酔いと眠りの気ままさを誇り、閑と静こそが自然の主となる条件だと結んだ一則です。残醺は残った酔い、白酔は昼間の酔いです。附熱の蛾は、火に飛び込む蛾のように、権勢のある人に群がる者のたとえです。黒甜は熟睡のことで、宋の蘇軾の詩の自注に見える言い方です。分香の蝶は花から花へ香りを分け合う蝶で、色恋の世界にいそしむ者を思わせます。最後の二句は、閑であれば水竹雲山の主となり、静かであれば風花雪月を自由にできると言います。先に見た、江山風月の主人は閑なる者だという言葉とも響き合います。心のゆとりと静けさこそが、自然の美しさを自分のものにする鍵なのです。
この章句が説くこと
閑適静寂風月隠逸権勢
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