酔古堂剣掃 / 集倩・愁ひを隴雲に寄す
恨留山鳥,啼百卉之春紅;愁寄隴雲,鎖四天之暮碧。
書き下し
恨みは山鳥に留まりて、百卉の春紅に啼き、 愁ひは隴雲に寄せて、四天の暮碧を鎖す。
現代語訳
恨みは山の鳥のもとにとどまって、百の草花が春に紅く咲く中で鳴き続け、愁いは丘の雲に託されて、四方の空の暮れゆく青を閉ざしてしまいます。
解説
晴れない心を、鳥と雲に託して描いた一則です。恨と愁は、どちらも人に言えない切ない思いのことです。山鳥がいつまでも鳴き続けるのを、恨みがそこに宿っているからだと見立てています。百卉は多くの草花、春紅は春に咲く紅い花で、華やかな景色の中でも鳥の声が哀しく響くという対照が胸に迫ります。隴雲は丘や畑の上にかかる雲で、それが夕暮れの青い空を四方から閉ざすさまに、心の重さを重ねています。暮碧は暮れ方の青緑色の空です。自分の感情を景色に託して詠むのは中国の詩文の伝統で、景色を借りることで、言葉にしにくい思いを表すことができます。気持ちが晴れないときは、それを景色の言葉で書き留めてみると、少し距離を置いて眺められるかもしれません。
この章句が説くこと
愁い情景春詩感情
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