酔古堂剣掃 / 集倩・北窗に坦腹す
南澗科頭,可任半簾明月;北窗坦腹,還須一榻清風。
書き下し
南澗に科頭すれば、半簾の明月に任すべし。 北窗に坦腹すれば、還た一榻の清風を須つ。
現代語訳
南の谷川で冠もかぶらずにいるなら、簾に半分差し込む明るい月にすべてを任せればよいのです。北の窓辺で腹をはだけて寝そべるなら、やはり寝台いっぱいの清らかな風がほしいものです。
解説
くつろいだ隠者の姿を、南と北、月と風で対にした一則です。科頭は冠や頭巾をつけず髪をむき出しにしていることで、礼儀を気にしない気楽な姿を表します。坦腹は腹をはだけて横になることで、東晋の王羲之が婿選びの使者が来たときも東の寝台で腹を出して寝ていて、かえって婿に選ばれたという話が知られています。北窓は陶淵明が夏に北の窓の下で寝ころび、涼しい風に吹かれて楽しんだ話を思わせます。形式や体裁を脱ぎ捨てて、月と風に身をまかせる姿が、いかにも自由でのびやかです。いつも身なりや人目を気にしている人にとって、誰にも気をつかわずにくつろげる時間と場所は、心身を回復させる大切なものでしょう。
この章句が説くこと
閑適隠逸陶淵明月清風
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