酔古堂剣掃 / 集奇・我が北窗の一枕に輸く
道上紅塵,江中白浪,饒他南面百城;花間明月,松下涼風,輸我北窗一枕。
書き下し
道上の紅塵、江中の白浪、饒ひ他は南面百城なるも、花間の明月、松下の涼風、我が北窗の一枕に輸けん。
現代語訳
道にもうもうと立つ赤い土ぼこり、川に逆巻く白い波、そうした世の苦労の中で、たとえ相手が百の城を治める王侯であっても、花の間の明月、松の下の涼しい風の中にある、私の北の窓辺でのひと眠りには負けるでしょう。
解説
王侯の地位よりも、隠者の昼寝のほうがまさると言う対句です。紅塵は都の大路に舞う土ぼこりで、名利を求めて奔走する俗世のたとえ、白浪は川の荒波で、世渡りの危うさを表します。南面百城は、北魏の李謐が、万巻の書を持てば南面して百城を治める王侯の位など要らない、と言ったことで知られる言葉で、王侯の地位を指します。北窓の一枕は、晋の陶淵明が、夏に北の窓の下で横になり涼風に吹かれて、自分は太古の民のようだと言った話を踏まえています。どれほど高い地位も、心安らかなひと眠りには及ばないというのです。地位や成功を追う中でも、心から安らげる時間の価値を忘れないようにしたいものです。
この章句が説くこと
隠逸閑適名利知足清閑
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