酔古堂剣掃 / 集法・小人を待つは惡まざるに難し
待小人不難於嚴,而難於不惡;待君子不難於恭,而難於有禮。
新字:待小人不難於厳,而難於不悪;待君子不難於恭,而難於有礼。
書き下し
小人を待つは嚴なるに難からずして、惡まざるに難し。君子を待つは恭なるに難からずして、禮有るに難し。
現代語訳
つまらない人に対しては、厳しくするのは難しくありませんが、憎まないでいるのが難しいのです。立派な人に対しては、うやうやしくするのは難しくありませんが、礼にかなった振る舞いをするのが難しいのです。
解説
小人と君子、それぞれへの接し方の本当の難しさを示した一則で、菜根譚にもほぼ同じ句があります。小人に厳しく当たることは誰にでもできますが、厳しくしながらも心の中で憎まないのは難しいものです。憎しみは相手に伝わり、かえって相手を頑なにします。君子にへりくだることも簡単ですが、それがへつらいにならず、節度ある礼として表れるのは難しいと言います。恭と礼の違いは、ただ低姿勢か、筋の通った敬意かの違いでしょう。苦手な相手にも、尊敬する相手にも、心の奥の姿勢が問われているのです。

人生を、一行の式にしてみた。
志×積×時×憤÷(1+執)+命。古典から導いた式『人生の方程式』と、二十四の悩みに古典が答える『人生の教科書』(PDF)、師導の全機能1か月がセットで700円です。
本の中身を見るこの章句が説くこと
処世礼節寛容君子人間関係
関連する章句
-
『初学訓』巻之三一学問の道は、他にあらず、只、善悪を明らかに知りて、善を行ひ悪を去るにあり。およそ人は、ただ心もわざも、善に志し善を行ひて、人をあはれみめぐみ、人を楽ましめて、人を苦めず、人をよみして、人をにくまず、人をうらみず、人の善を褒めて、人をそしらず、これ即ち仁の理にして、君子の道なり。人となりては、君子の道を学び行ふべし。善に志なく、善を行はずして、人を苦めて、人を憐まず、人を侮りて、人を敬はず、人を怨み怒り、人を譏る、是小人の道なり。人となりて、小人の道を行ふべからず。
-
言志四録・言志晩録 第百五十条 自ら怨みを致す所以を怨む恩怨分明なるは、君子の道に非ず。徳の報ゆべきは、固よりなり。怨みに至りては、則ち当に自ら其の怨みを致す所以を怨むべし。
-
『講孟余話』萬章上 第三章十一月二十一日。「怒りを蔵さず、怨みを宿さず」、此の二句尤も善し。徒らに弟に於けるのみならず、仁人の心、他人に於けるも亦斯くの如し。論語に「怨みを匿して其の人を友とするは、左丘明之れを恥づ、丘も亦之れを恥づ」と云ふ、亦同意なり。凡そ人に交はるの道、怨怒する所あらば、直ちに是れを忠告直言すべし。若し忠告直言すること能はずんば、怨怒することなきに若かず。若し然らずして是れを胸中に蔵匿留蓄して、時を待ちて是れを発せんと欲するは、陰柔小人のする所にして、誠に臆病と云ふべし。君子の心は天の如し、怨怒する所あれば雷霆の怒りを発することもあれども、其の事解くるに至りては、又天晴れ日明らかなる如く、一毫も心中に残す所なし、是れ君子陽剛の徳なり。
-
論語・為政篇子曰く、「君子は器ならず。」
-
『慎思録』巻之五唯君子のみ能く君子と小人とを知る。小人は君子の心を知ること能はず。反りて猜疑疾悪し、動もすれば妨害を為し、終に枉冤陥殺するに至る者も、亦之れ有り。且つ小人は小人の害を為すを察せず、引き進めて己の助けと為し、終に其の身を亡ぼすに至りて悟らず。至愚にして暁すべからずと謂ふべし。
-
『学則』答屈景山書夫れ学問なる者は君子の事なり。君子は争ふ所無し。争へば斯ち徳を害す。問ふ者は弟子の事なり。弟子の礼を秉りて訟ふる者の鬩ぎを用ふ。鬩げば斯ち礼を害す。徳と礼とを害する者は、君子由らざるなり。孟子の弁を好みて楊墨を闢けしより、其の時の已むを得ざるに由ると雖も、亦た古の道に非ざるなり。不佞窃かに焉を惜しむ。爾後、稷下の市学、田巴一日に千人を服す。流風の扇ぐ所、是非蜂涌し、百世に紛呶たり。悲しいかな。彼の浮屠の勘弁有るが若きは、則ち亦た訟へを聴く者の道なり。儒の黠き者、陰かに其の術を操り、以て人を窺ひて自ら憙ぶ。乃ち名教の罪人なり。