酔古堂剣掃 / 集法・灘を上るの舟を挽くが如し
救既敗之事者,如馭臨崖之馬,休輕策一鞭;圖垂成之功者,如挽上灘之舟,莫少停一桌。
新字:救既敗之事者,如馭臨崖之馬,休軽策一鞭;図垂成之功者,如挽上灘之舟,莫少停一桌。
書き下し
既に敗れたるの事を救ふ者は、崖に臨むの馬を馭するが如く、輕々しく一鞭を策つを休めよ。垂成の功を圖る者は、灘を上るの舟を挽くが如く、少しも一桌を停むる莫かれ。
現代語訳
すでに失敗した事を立て直す者は、崖っぷちに立つ馬を御するようなものです。軽々しく一鞭当ててはいけません。まもなく成し遂げられる功を目指す者は、早瀬をさかのぼる舟を引くようなものです。少しも棹を休めてはいけません。
解説
立て直しの局面と、仕上げの局面での心得を、馬と舟のたとえで説いた一則で、菜根譚にもほぼ同じ句があります。崩れかけた事態を救うときは、焦って強い手を打つと、崖の馬のように落ちてしまいます。慎重に、少しずつ手綱を引くことが大切です。一方、完成間近の仕事は、早瀬を上る舟のように、一瞬でも手を止めれば押し戻されます。原文の一桌は、一棹の写し違いと思われます。危機では慌てず、仕上げでは気を抜かない。局面によって緩急を使い分けることが、事を成す人の知恵です。

人生を、一行の式にしてみた。
志×積×時×憤÷(1+執)+命。古典から導いた式『人生の方程式』と、二十四の悩みに古典が答える『人生の教科書』(PDF)、師導の全機能1か月がセットで700円です。
本の中身を見るこの章句が説くこと
処世慎重継続危機完遂
関連する章句
-
易経・需卦郊に需つとは、難を犯して行かざるなり。恒を用うるに利ろし、咎无しとは、未だ常を失わざるなり。沙に需つとは、衍かにして中に在るなり。小しく言有りと雖も、以て吉に終わるなり。泥に需つとは、災い外に在るなり。我より寇を致す、敬慎すれば敗れざるなり。血に需つとは、順にして以て聴くなり。酒食に貞にして吉とは、中正なるを以てなり。速かざるの客来たる、之を敬すれば終には吉。位に当たらずと雖も、未だ大いに失わざるなり。
-
『酔古堂剣掃』集法・平地を履みて恐る君子は青天に對して懼れ、雷霆を聞きて驚かず。平地を履みて恐れ、風波を涉りて疑はず。
-
論語・為政篇子張禄を干(もと)むを学ぶ。子曰く、多く聞いて疑わしきを闕(か)き、其の余を慎言すれば、則ち尤(とがめ)寡なし。多く見て殆(あやう)きを闕き、其の余を慎行すれば、則ち悔寡なし。言に尤寡なく、行に悔寡なければ、禄は其の中に在り。
-
『酔古堂剣掃』集法・拙く初めに戒む其の巧みに末に持せんよりは、拙く初めに戒むるに若かず。
-
『武家家訓集』武田信繁家訓九十九箇条「第28〜30条」一、深く知晉たりと雖も、人前に於いて妄りに雜談すべからざる事。語に云ふ、三たび思ひて一たび言ひ、九たび思ひて一たび行ふ、と。 一、參禪嗜むべき事。語に曰く、參禪に別に秘決無し、唯だ生死を思ふこと切なり、と。 一、何れの時にも歸宿の時は、先へ使者を遣はすべし。自然留守番衆の行儀等油斷の砌、折檻閣き難く、又細事を以て礼明すれば、際限無からんか。云ふ、敎へずして殺す、之を逆と云ふ、と。
-
論語・述而篇子の慎む所は、斉・戦・疾なり。