酔古堂剣掃 / 集豪・暗に珠を投ずる莫かれ
先達笑彈冠,休向侯門輕曳裾;相知猶按劍,莫從世路暗投珠。
新字:先達笑弾冠,休向侯門軽曳裾;相知猶按剣,莫従世路暗投珠。
書き下し
先達も彈冠を笑ふ、侯門に向かひて輕がるしく裾を曳くを休めよ。相知すら猶ほ劍を按ず、世路に從ひて暗に珠を投ずる莫かれ。
現代語訳
先に出世した人でさえ、後から来た者が冠の塵を払って仕官を待つ姿を笑います。王侯の門に向かって軽々しく裾を引いて出入りするのはやめなさい。知り合いでさえ、なお剣に手をかけて身構えます。世の道に従って、闇の中で人に宝珠を投げ与えるようなことはしてはいけません。
解説
唐の王維の詩、白首の相知すら猶ほ剣を按じ、朱門の先達は弾冠を笑ふを下敷きにした一則です。弾冠は冠の塵を払って仕官を待つこと、曳裾は長い裾を引いて権門に出入りし取り入ることです。暗投明珠は、漢の鄒陽が、夜光の珠も暗闇で人に投げれば剣に手をかけられると述べた故事で、才能を理解しない人に差し出すたとえです。人情は波のように移ろいやすく、権力者に取り入っても軽んじられるだけだと戒めています。自分の才や誠意は、それを分かる人のもとでこそ生きます。差し出す相手を選ぶことも大切です。
この章句が説くこと
処世人情節操才能世態
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