酔古堂剣掃 / 集法・隱德を種うるに如かず
市私恩,不如扶公議;結新知,不如敦舊好;立榮名,不如種隱德;尚奇節,不如謹庸行。
新字:市私恩,不如扶公議;結新知,不如敦旧好;立栄名,不如種隠徳;尚奇節,不如謹庸行。
書き下し
私恩を市るは、公議を扶くるに如かず。新知を結ぶは、舊好を敦くするに如かず。榮名を立つるは、隱德を種うるに如かず。奇節を尚ぶは、庸行を謹むに如かず。
現代語訳
個人的な恩を売るよりは、公の正論を支えるほうがよいのです。新しい知人を作るよりは、古なじみとの親しみを厚くするほうがよいのです。華やかな名声を立てるよりは、人に知られない徳を植えるほうがよいのです。人目を引く奇抜な節操を尊ぶよりは、日々の平凡な行いを慎むほうがよいのです。
解説
派手なものより地道なものを選べと、四つの対比で説いた一則で、菜根譚にもほぼ同じ句があります。私恩を市るとは、人に恩を売って自分の味方を作ることで、それより公の正しい議論を支えよと言います。新しい人脈より古い友との絆、名声より陰徳、奇抜な行いより日々の当たり前の行いを大切にせよと言います。隠徳は、人に知られずに積む善行のことです。庸行は、平凡な日常の行いです。目立つことは人の注目を集めますが、長く人を支えるのは目立たない積み重ねです。今日一日の平凡な行いを丁寧にしたいものです。
この章句が説くこと
陰徳交友修身公正地道
関連する章句
-
『呻吟語』外篇・治道・公正の二字公正の二字は是れ世界を撐持し底る。這の二字沒し了はれば、便ち天を塌さん。
-
『呻吟語』内篇・修身・圭角を露はすは大病痛才かに一段の公直の氣有りて、言を出だし事を做すに便ち圭角を露はすは、是れ大病痛なり。
-
説苑・說叢命を知る者は天を怨みず、己を知る者は人を怨みず。人にして愛せざれば則ち仁なる能わず、佞にして巧ならざれば則ち信なる能わず。善を言うに身に及ぶ毋かれ、惡を言うに人に及ぶ毋かれ。上清くして欲無ければ、則ち下正しくして民樸なり。來事は追うべきなり、往事は及ぶべからず。思慮の心無ければ則ち達せず、談說の辭無ければ則ち樂しからず。
-
説苑・貴德孔子曰く、「里は仁を美と為す、択びて仁に処らずんば、焉んぞ智を得ん」と。夫れ仁者は、必ず恕して然る後に行ふ、行ひ一たび不義にして、一無罪を殺さば、以て高官大位を得と雖も、仁者は為さざるなり。夫れ大仁は、近きを愛して以て遠きに及び、其の諧はざる所有るに及びては、則ち小仁を虧きて以て大仁に就く。大仁は、恩四海に及ぶ、小仁は、妻子に止まる。妻子は、其の知の利を営むを以て、婦人の恩を以て之を撫し、其の内情を飾り、其の偽を雕画す、孰か其の真に非ざるを知らんや。時に栄を蒙ると雖も、然れども士君子は以て大辱と為す。故に共工・驩兜・符里・鄧析、其の智識する所無きに非ざるなり、然れども聖王の誅する所と為る者は、徳無くして苟くも利するを以てなり。豎刁・易牙、体を毀ち子を殺して以て利を干む、卒に賊と斉に為る。故に人臣仁ならざれば、篡弑の乱生じ、人臣にして仁なれば、国治まり主栄ゆ。明主焉を察すれば、宗廟大いに寧し。夫れ人臣すら猶ほ仁を貴ぶ、況んや人主に於てをや。故に桀紂は不仁を以て天下を失ひ、湯武は積徳を以て海土を有つ。是を以て聖王は徳を貴びて之を務め行ふ。孟子曰く、「恩を推せば以て四海に及ぶに足り、恩を推さざれば以て妻子を保つに足らず。古人の大いに人に過ぐる所以の者は他無し、善く其の有る所を推すのみ」と。
-
論語・為政篇哀公問いて曰く、「何を為さば則ち民服せん。」孔子対えて曰く、「直きを挙げて諸(これ)を枉れるに錯(お)かば、則ち民服せん。枉れるを挙げて諸を直きに錯かば、則ち民服せず。」
-
尚書・說命中惟れ治乱は庶官に在り。官は私昵に及ぼさず、惟れ其の能のみ。爵は悪徳に及ぼす罔く、惟れ其の賢のみ。