酔古堂剣掃 / 集豪・海市蜃樓は醉眼に供す
松風澗雨,九霄外聲聞環佩,清我吟魂;海市蜃樓,萬水中一幅畫圖,供吾醉眼。
新字:松風澗雨,九霄外声聞環佩,清我吟魂;海市蜃楼,万水中一幅画図,供吾酔眼。
書き下し
松風澗雨は、九霄の外に聲環佩を聞くがごとく、我が吟魂を清くす。海市蜃樓は、萬水の中の一幅の畫圖にして、吾が醉眼に供す。
現代語訳
松を渡る風と谷川の雨の音は、天の遥か彼方で玉の飾りが鳴るのを聞くようで、私の詩心を清めてくれます。海上の蜃気楼は、果てしない水の中に掛けられた一幅の絵であり、私の酔った目を楽しませてくれます。
解説
耳で聞く自然と目で見る自然を、それぞれ天上の音楽と一幅の絵に見立てた対句です。九霄は天の最も高いところ、環佩は腰に帯びる玉の飾りで、歩くと澄んだ音を立てます。松風と谷川の雨音を、その玉の音にたとえています。海市蜃楼は蜃気楼のことで、海の上に楼閣が浮かんで見える現象です。自然のさまざまな姿を、自分のための音楽や絵として味わう心の豊かさが表れています。何気ない風の音や遠くの景色も、受け取る側の心次第で、どんな芸術にも劣らない贈り物になります。
この章句が説くこと
自然風雅詩感性閑適
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