酔古堂剣掃 / 集豪・琴を解きて自ら供す
山廚失斧,斷之以劍。客至無枕,解琴自供。盥盆潰散,磬為註洗。蓋不暖足,覆之以蓑。
新字:山廚失斧,断之以剣。客至無枕,解琴自供。盥盆潰散,磬為註洗。蓋不暖足,覆之以蓑。
書き下し
山廚に斧を失へば、之を斷つに劍を以てす。客至りて枕無ければ、琴を解きて自ら供す。盥盆潰散すれば、磬を註洗と為す。蓋ひ足を暖めざれば、之を覆ふに蓑を以てす。
現代語訳
山の台所で斧をなくしたら、剣で薪を断ち切ります。客が来て枕がなければ、琴をほどいて枕代わりに差し出します。たらいが壊れてばらばらになれば、磬(石の打楽器)を洗い桶の代わりにします。掛け物が足を暖めなければ、蓑をかけて覆います。
解説
山住まいの不自由を、あり合わせの道具で平然としのぐ様子を描いた一則です。斧の代わりに剣、枕の代わりに琴、たらいの代わりに磬、夜具の代わりに蓑と、四つの工夫が並びます。剣も琴も磬も、本来は武や雅楽のための道具で、それを日用に回してしまうところに豪放な面白さがあります。物がないことを嘆かず、手元にあるもので楽しんでしまう心の余裕が読みどころです。今の暮らしは物が多すぎて、足りないことに弱くなっています。ないものはないなりに工夫する力は、非常時にも頼りになるでしょう。
この章句が説くこと
清貧閑適隠逸工夫豪放
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