酔古堂剣掃 / 集綺・青山其の眉黛を學ぶ
黃鳥讓其聲歌,青山學其眉黛。
新字:黄鳥譲其声歌,青山学其眉黛。
書き下し
黃鳥も其の聲歌に讓り、 青山も其の眉黛を學ぶ。
現代語訳
鶯もその人の歌声には一歩譲り、青い山もその人の眉墨の色を手本にします。
解説
美しい女性の歌声と眉を、自然の美を引き合いに出して讃えた一則です。黄鳥は鶯のことで、美しい鳴き声の代表です。その鶯でさえ、この人の歌声にはかなわないと身を引くと言います。後の句の眉黛は、青黒い眉墨で描いた眉のことです。昔から女性の眉は遠くの山並みにたとえられ、遠山の眉という言い方もあります。ここではそれを逆転させて、青い山のほうがこの人の眉を学んでいると言います。自然を基準に人の美しさを測るのではなく、人の美しさが自然の手本になるという大胆な言い回しで、最大級の賛辞になっています。主語を省いて、たたえられる人の姿を読者の想像にゆだねているところも、奥ゆかしい表現です。
この章句が説くこと
美人歌声見立て艶麗自然
関連する章句
-
『酔古堂剣掃』集倩・淡黛を山妝に拭ふ雲寒潭に落ちて、塵容を水鏡に滌ひ、 月深谷に流れて、淡黛を山妝に拭ふ。
-
『酔古堂剣掃』集倩・白雲は僻處に來たる黃鳥は情多く、常に夢中に向かひて醉客を呼ぶ。 白雲は意懶く、偏へに僻處に來たりて幽人に媚ぶ。
-
『酔古堂剣掃』集豪・翠に眉黛を勻ふ紅く口脂を潤すは、花蕊の乍ち微雨を過ぐるがごとく、 翠に眉黛を勻ふは、柳條の徐ろに輕風に拂はるるがごとし。
-
『酔古堂剣掃』集情・半聲の春鳥偏へに愁人を喚ぶ一片の秋山は、能く病容を療し、半聲の春鳥は、偏へに愁人を喚ぶ。
-
『酔古堂剣掃』集情・帳裏に笙を吹きて鳳凰を學ぶ青娥皓齒吳倡に別る、梅粉粧ひ成す半額の黃。羅屏繡幔寒玉を圍み、帳裏に笙を吹きて鳳凰を學ぶ。
-
『酔古堂剣掃』集景・此の景虛しく擲つべからず萬里の澄空、千峰開け霽れ、山色は黛の如く、風氣は秋の如く、濃陰は幕の如く、煙光は縷の如く、笛響は鶴唳の如く、經唄は咿唔の如く、溫言は春絮の如く、冷語は寒冰の如し、此の景虛しく擲つべからず。