酔古堂剣掃 / 集豪・糟邱を假りて霸業と爲す
英雄未轉之雄圖,假糟邱為霸業;風流不盡之余韻,托花谷為深山。
新字:英雄未転之雄図,仮糟邱為覇業;風流不尽之余韻,托花谷為深山。
書き下し
英雄未だ轉ぜざるの雄圖は、糟邱を假りて霸業と爲し、 風流盡きざるの餘韻は、花谷に托して深山と爲す。
現代語訳
英雄がまだ実現できずにいる大きな計画は、酒かすの山を借りて覇業に見立て、風流の尽きない余韻は、花咲く谷に託して深山とします。
解説
志を遂げられない英雄と、風流を愛する文人が、それぞれの思いを酒と花に託す姿を描いた一則です。糟邱は、酒かすが積もってできた丘のことで、大酒を飲むことのたとえです。天下を取るような大きな計画を実現する機会がないため、酒を飲むことを覇業の代わりにしていると言います。豪快でありながら、どこか哀しさの漂う言葉です。後の句は、風流の心が尽きずに残っているのを、花の咲く谷に託して、そこを自分の隠れ住む深山としていると言います。どちらも、本来の望みを果たせないまま、別のものに思いを託している点で共通しています。思いどおりにならない現実の中で、心の置き場所を見つける工夫とも言えます。
この章句が説くこと
不遇酒風流英雄隠逸
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