酔古堂剣掃 / 集綺・天河の杼を弄す
風驚蟋蟀,聞織婦之鳴機,月滿蟾蜍,見天河之弄杼。
新字:風驚蟋蟀,聞織婦之鳴機,月満蟾蜍,見天河之弄杼。
書き下し
風蟋蟀を驚かせば、織婦の機を鳴らすを聞き、 月蟾蜍に滿つれば、天河の杼を弄するを見る。
現代語訳
風がこおろぎを驚かせて鳴かせると、機を織る女が機織りの音を響かせるのが聞こえます。月がひきがえるの形に満ちると、天の川で織女が杼を操っているのが見えます。
解説
秋の夜の虫の声と月の光を、機織りのイメージで結んだ一則です。蟋蟀はこおろぎで、その鳴き声が機織りの音に似ていることから促織とも呼ばれ、冬支度の機織りを促す虫とされました。前の句は、風に驚いたこおろぎの声と、夜なべに機を織る女性の機の音とが重なり合う様子です。後の句の蟾蜍はひきがえるで、月に住むと伝えられたことから月の別名となりました。満月の夜に天の川を見上げると、織女が杼、すなわち横糸を通す道具を操っているように見えると言います。地上の機織りと天上の機織りが響き合い、秋の夜の静けさと人の営みが美しく重なります。夜なべ仕事をする人の姿への温かな眼差しも感じられます。
この章句が説くこと
秋夜機織り織女自然季節
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