酔古堂剣掃 / 集綺・四時の宜しき
風開柳眼,露浥桃腮,黃鸝呼春,青鳥送雨,海棠嫩紫,芍藥嫣紅,宜其春也。碧荷鑄錢,綠柳繅絲,龍孫脫殼,鳩婦喚晴,雨驟黃梅,日蒸綠李,宜其夏也。槐陰未斷,雁信初來,秋英無言,曉露欲結,蓐收避席,青女辦妝,宜其秋也。桂子風高,蘆花月老,溪毛碧瘦,山骨蒼寒,千巖見梅,一雪欲臘,宜其冬也。
新字:風開柳眼,露浥桃腮,黄鸝呼春,青鳥送雨,海棠嫩紫,芍薬嫣紅,宜其春也。碧荷鋳銭,緑柳繅糸,竜孫脱殼,鳩婦喚晴,雨驟黄梅,日蒸緑李,宜其夏也。槐陰未断,雁信初来,秋英無言,暁露欲結,蓐収避席,青女辦妝,宜其秋也。桂子風高,蘆花月老,渓毛碧痩,山骨蒼寒,千巖見梅,一雪欲臘,宜其冬也。
書き下し
風柳眼を開き、露桃腮を浥し、黃鸝春を呼び、青鳥雨を送り、海棠は嫩紫、芍藥は嫣紅、其の春に宜しきなり。 碧荷錢を鑄、綠柳絲を繅り、龍孫殼を脫し、鳩婦晴を喚び、雨は黃梅に驟く、日は綠李を蒸す、其の夏に宜しきなり。 槐陰未だ斷えず、雁信初めて來り、秋英言無く、曉露結ばんと欲し、蓐收席を避け、青女妝を辦ず、其の秋に宜しきなり。 桂子風高く、蘆花月老い、溪毛碧く瘦せ、山骨蒼く寒く、千巖梅を見、一雪臘ならんと欲す、其の冬に宜しきなり。
現代語訳
風が柳の芽を開かせ、露が桃の花の頬をしっとりと濡らし、高麗鶯が春を呼び、青い鳥が雨を送り、海棠は若々しい紫、芍薬はあでやかな紅に咲きます。これが春にふさわしい姿です。緑の蓮の葉は銭を鋳たように丸く、緑の柳は糸を繰り出したように垂れ、竹の子は皮を脱ぎ、雌の鳩は晴れを呼んで鳴き、雨は梅の実の黄ばむころに激しく降り、日の光は青い李を蒸すように照りつけます。これが夏にふさわしい姿です。槐の木陰はまだ途切れず、雁の便りが初めて届き、秋の花は黙って咲き、明け方の露が結ぼうとし、秋の神の蓐収が席を譲り、霜の女神の青女が装いを整えます。これが秋にふさわしい姿です。木犀の香る風は高く吹き、蘆の花は月の光の下に老い、谷川の水草は青くやせ、山の岩肌は青黒く寒々とし、多くの岩山に梅が見え、一度の雪で年の暮れが近づきます。これが冬にふさわしい姿です。
解説
この章句が説くこと
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