酔古堂剣掃 / 集韻・春夜は宜しく苦吟すべし
春夜宜苦吟,宜焚香讀書,宜與老僧說法,以銷艷思。夏夜宜閑談,宜臨水枯坐,宜聽松聲冷韻,以滌煩襟。秋夜宜豪遊,宜訪快士,宜談兵說劍,以除蕭瑟。冬夜宜茗戰,宜酌酒說《三國》、《水滸》、《金瓶梅》諸集,宜箸竹肉,以破孤岑。
新字:春夜宜苦吟,宜焚香読書,宜与老僧説法,以銷艶思。夏夜宜閑談,宜臨水枯坐,宜聴松声冷韻,以滌煩襟。秋夜宜豪遊,宜訪快士,宜談兵説剣,以除蕭瑟。冬夜宜茗戦,宜酌酒説《三国》、《水滸》、《金瓶梅》諸集,宜箸竹肉,以破孤岑。
書き下し
春夜は宜しく苦吟すべし、宜しく香を焚きて書を讀むべし、宜しく老僧と法を說き、以て艷思を銷すべし。夏夜は宜しく閑談すべし、宜しく水に臨みて枯坐すべし、宜しく松聲冷韻を聽き、以て煩襟を滌ふべし。秋夜は宜しく豪遊すべし、宜しく快士を訪ふべし、宜しく兵を談じ劍を說き、以て蕭瑟を除くべし。冬夜は宜しく茗戰すべし、宜しく酒を酌みて『三國』、『水滸』、『金瓶梅』の諸集を說くべし、宜しく竹肉に箸すべし、以て孤岑を破るべし。
現代語訳
春の夜は、苦心して詩を練るのがよく、香を焚いて書を読むのがよく、年老いた僧と仏法を語り合って、艶めいた思いを消すのがよいのです。夏の夜は、のんびり語り合うのがよく、水辺でじっと座るのがよく、松風の冷ややかな響きを聴いて、胸の煩わしさを洗い流すのがよいのです。秋の夜は、豪快に遊ぶのがよく、痛快な人物を訪ねるのがよく、兵法を語り剣を論じて、物寂しさを払いのけるのがよいのです。冬の夜は、茶の品評を競うのがよく、酒を酌みながら『三国志演義』『水滸伝』『金瓶梅』などの物語を語り合うのがよく、笛や歌を楽しんで、ひとりの侘しさを打ち破るのがよいのです。
解説
四季の夜それぞれにふさわしい過ごし方を並べた一則です。春は心が浮つくので詩や読書、僧との法談で艶めいた思いを鎮め、夏は暑さでいらだつので水辺や松風で煩襟、つまり胸の煩わしさを洗います。秋は物寂しいので豪快な遊びや兵法談義で蕭瑟を払い、冬は孤独になりがちなので茶や酒、物語で孤岑、つまりひとりの寂しさを破ります。竹肉は笛の音と歌声を言う言葉と読みましたが、筍と肉を箸でつつくとも読めます。季節ごとの心の傾きを見きわめ、それを補う楽しみを選ぶという発想が見事です。自分の心の季節に合わせて過ごし方を変える工夫は、今も暮らしを整える手がかりになります。
この章句が説くこと
季節読書閑適交友風雅
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