酔古堂剣掃 / 集綺・花を看る步
看花步男子當作女人,尋花步女子當作男人。
新字:看花歩男子当作女人,尋花歩女子当作男人。
書き下し
花を看る步は、男子も當に女人と作るべく、 花を尋ぬる步は、女子も當に男人と作るべし。
現代語訳
花を眺めて歩くときは、男性も女性のようにしなやかな足どりになるべきであり、花を探し求めて歩くときは、女性も男性のようにきびきびとした足どりになるべきです。
解説
花を楽しむときの歩き方を、男女の足どりにたとえて説いた、ユーモアのある一則です。すでに咲いている花を眺めるときは、急がずゆっくりと、女性のようにしとやかに歩くのがよいと言います。花を踏み荒らさず、一輪一輪を丁寧に味わう心の余裕が求められます。反対に、まだ見ぬ花を探して山野を歩くときは、女性であっても男性のように大股でさっさと進むのがよいと言います。探すときは足で稼ぎ、見つけたら足を緩めるという、場面に応じた緩急の使い分けです。当時の男女の歩き方の通念に基づいた表現ですが、要点は、目的に合わせて歩みを変えることにあります。仕事でも、探す時期と味わう時期で速さを変えることが大切です。
この章句が説くこと
緩急花見風雅処世歩み
関連する章句
-
『酔古堂剣掃』集倩・賞花には豪友を結ぶ花を賞するには須らく豪友を結ぶべく、妓を觀るには須らく淡友を結ぶべく、山に登るには須らく逸友を結ぶべく、舟を泛ぶるには須らく曠友を結ぶべく、月に對するには須らく冷友を結ぶべく、雪を待つには須らく艷友を結ぶべく、酒を捉るには須らく韻友を結ぶべし。
-
『酔古堂剣掃』集素・人の是非を言はず但だ花の開落を看て、人の是非を言はず。
-
『酔古堂剣掃』集倩・高人を看るは竹を看るが如し美人を相るは花を相るが如く、清艷にして若しくは遠く若しくは近きの思ひ有るを貴ぶ。 高人を看るは竹を看るが如く、瀟灑にして密ならず疏ならざるの致有るを貴ぶ。
-
『酔古堂剣掃』集綺・花は半開を看る木香盛んに開けば、杯を把りて獨り其の下に坐し、遙かに青奴をして笛を吹かしめ、止だ一小奚を留めて酒に侍せしむ。才かに少しく斟酌すれば便ち退きて、迎春の架の後に立つ。 花は半開を看、酒は微醉に飲む。
-
『酔古堂剣掃』集景・花に喜怒寤寐曉夕有り花に喜、怒、寤、寐、曉、夕有り、花を浴する者其の候を得れば、乃ち膏雨と為る。 淡雲薄日、夕陽佳月は、花の曉なり。 狂號連雨、烈焰濃寒は、花の夕なり。 檀唇日に烘り、媚體風を藏すは、花の喜なり。 暈酣神斂まり、煙色迷離たるは、花の愁なり。 枝を欹て檻に困しみ、風に勝へざるが如きは、花の夢なり。 嫣然として流盼し、光華目に溢るるは、花の醒なり。
-
『酔古堂剣掃』集綺・花に獨り蘊むの香有り酒に懸け難きの色有り、花に獨り蘊むの香有り。 此を以て紅顏媚骨を想へば、便ち之を格外に得べし。