酔古堂剣掃 / 集綺・粉蝶其の間に聚まる
李後主宮人秋水,喜簪異花,芳拂髻鬢,嘗有粉蝶聚其間,撲之不去。
新字:李後主宮人秋水,喜簪異花,芳払髻鬢,嘗有粉蝶聚其間,撲之不去。
書き下し
李後主の宮人秋水、喜んで異花を簪し、芳は髻鬢を拂ふ。 嘗て粉蝶の其の間に聚まる有り、之を撲てども去らず。
現代語訳
李後主(南唐の最後の君主、李煜)の宮女の秋水は、珍しい花を髪に挿すのを好み、その香りが髷や鬢にただよっていました。あるとき、白い蝶がその髪のあたりに集まってきて、払いのけても去らなかったといいます。
解説
南唐の宮廷に伝わる、花を愛した宮女の逸話を記した一則です。李後主は南唐の最後の君主李煜で、国を失った後に作った哀切な詞で知られる文人君主です。その宮女の秋水は、珍しい花を髪に挿すのを好み、花の香りがいつも髪にまとわっていました。そのため蝶が花と間違えて髪に集まり、払っても離れなかったというのです。香りの高さと、それに引き寄せられる蝶という取り合わせが、宮女の美しさを直接言わずに伝えています。華やかな宮廷の一場面ですが、この宮廷がやがて滅びることを思うと、はかなさも感じられます。美しさを言葉で飾るより、周りに現れる出来事で語る表現の妙を味わいたい一則です。
この章句が説くこと
逸話宮廷花風雅李煜
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