酔古堂剣掃 / 集情・鳥は紅雨に沾ふ
蝶憩香風,尚多芳夢;鳥沾紅雨,不任嬌啼。
書き下し
蝶は香風に憩ひて、尚ほ芳夢多く、鳥は紅雨に沾ひて、嬌啼に任へず。
現代語訳
蝶は香る風の中で羽を休め、なお甘い夢をたくさん見ています。鳥は花びらの雨にぬれて、かわいらしく鳴く力もありません。
解説
春の終わりの気配を、蝶と鳥の姿で描いた対句です。香風は花の香りを運ぶ風、芳夢は甘く美しい夢です。紅雨は赤い花びらが雨のように散ることで、春が過ぎようとしていることを表します。嬌啼はかわいらしい鳴き声です。蝶はまだ春の夢の中にいるのに、鳥はもう花の散るのにぬれて声も出ない。同じ春の景色の中に、まだ浮かれている心と、終わりを感じ取って沈む心が並んでいます。物事の盛りと終わりは、いつも同時に訪れるものです。楽しい時間の最中にも、その終わりを思い、だからこそ今を大切にしようとする心を持ちたいものです。
この章句が説くこと
情春無常自然風雅
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