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酔古堂剣掃 / 集綺・蟬聲の斷ゆる處

鳥語聽其澀時,憐嬌情之未囀;蟬聲聽已斷處,愁孤節之漸消。

新字:鳥語聴其澀時,憐嬌情之未囀;蝉声聴已断処,愁孤節之漸消。

書き下し

鳥語は其の澀る時を聽きて、嬌情の未だ囀らざるを憐れみ、 蟬聲は已に斷ゆる處を聽きて、孤節の漸く消ゆるを愁ふ。

現代語訳

鳥の声は、まだぎこちなくつかえている時に聴いて、そのかわいらしい思いがまだ十分にさえずれずにいるのをいとおしみます。蝉の声は、もう途切れたところで聴いて、その孤高の節操がしだいに消えていくのを悲しみます。

解説

鳥の声と蝉の声を、始まりと終わりの二つの時に聴き分けた一則です。前の句は春先の若い鳥で、まださえずりが上手でなく、声がつかえる初々しさに、うまく言葉にできない幼い思いを重ねています。後の句は秋の蝉で、鳴き声が途切れたところに、露だけを飲んで清く生きると言われた蝉の孤高の節操が消えていく哀れを感じ取っています。蝉は古くから高潔の象徴として詩に詠まれてきました。満ち足りた盛りの声ではなく、まだ始まらない声と、すでに終わった声とに心を寄せるところに、繊細な感受性があります。物事の盛りだけでなく、その前と後にも目を向けると、見えてくる情があるものです。
『人生の方程式』の表紙

人生を、一行の式にしてみた。

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この章句が説くこと

情趣風雅自然季節節操

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