酔古堂剣掃 / 集綺・琴は別鶴を悲しむ
堂上鳴琴,操久彈乎孤鳳;邑中製錦,紋重織於雙鸞。鏡想分鸞,琴悲別鶴。
新字:堂上鳴琴,操久弾乎孤鳳;邑中製錦,紋重織於双鸞。鏡想分鸞,琴悲別鶴。
書き下し
堂上に琴を鳴らし、操は久しく孤鳳を彈じ、 邑中に錦を製し、紋は重ねて雙鸞を織る。 鏡は分鸞を想ひ、琴は別鶴を悲しむ。
現代語訳
役所の堂の上で琴を鳴らしても、奏でる曲は長いあいだ独りの鳳凰の調べばかりです。町で錦を織るように治めても、その模様には重ねてつがいの鸞鳥を織り込みます。鏡は離ればなれになった鸞鳥を思い、琴は別れた鶴の曲に悲しみます。
解説
任地で職務に励みながら、遠く離れた伴侶を思う官人の心情を描いた一則です。堂上鳴琴は、孔子の弟子の宓子賤が琴を弾いて堂を下りずに町を治めたという故事、邑中製錦は、町を治めることを錦を織ることにたとえた『左伝』の子産の言葉に基づきます。どちらも善政の喩えですが、ここでは弾く曲が孤鳳、織る模様が雙鸞と、独り身の寂しさと夫婦への思いが重ねられます。鏡の分鸞は、つがいを失った鸞鳥が鏡に映る自分の姿を見て悲しんだという話を、別鶴は、夫婦の別れを歌った琴曲「別鶴操」を指します。仕事に打ち込む日々の中にも、大切な人を思う気持ちは消えないものです。
この章句が説くこと
夫婦別離治政琴情
関連する章句
-
『酔古堂剣掃』集情・鳳凰は斷絃の鳴に上らず蝴蝶は長く孤枕の夢に懸り、鳳凰は斷絃の鳴に上らず。
-
『酔古堂剣掃』集情・京兆の眉を描き難し綠綺の琴を弄するも、焉んぞ文君の聽くを得ん。 彩毫の筆を濡らすも、京兆の眉を描き難し。 雲を瞻月を望めば、悽愴の聲に非ざるは無し。 柳を弄び花を拈れば、盡く是れ銷魂の處なり。
-
『酔古堂剣掃』集綺・子期を黃金に鑄る同氣の求むるは、惟だ平原を錦繡に刺し、 同聲の應ずるは、徒らに子期を黃金に鑄る。
-
『酔古堂剣掃』集靈・無定河邊破鏡の愁ひ賀蘭山外虛兮として怨み、無定河邊破鏡に愁ふ。
-
『酔古堂剣掃』集情・子規啼く處人の歸るを憶ふ萬里の關河、鴻雁來る時信の斷ゆるを悲しむ。 滿腔の愁緒、子規啼く處人の歸るを憶ふ。
-
『酔古堂剣掃』集情・家は陽臺に勝る家は陽臺に勝り、懽を爲すは夢に非ず。人は蕭史に慙づるも、相偶して仙と成る。 輕扇初めて開き、忻びて笑靨を看る。長眉始めて畫き、愁ひて離粧に對す。 廣く金屏を攝め、愁ひをして擁せしむる莫かれ。恆に錦幔を開き、速かに人の歸るを望め。 鏡臺新たに去りて、應に落粉を餘すべし。熏爐未だ徙さず、定めて餘煙有らん。 淚は芳衾に滴り、錦花長く溼ふ。愁ひは玉軫に隨ひ、琴鶴恆に驚く。 錦水の丹鱗、素書稀に遠し。玉山の青鳥、仙使通じ難し。 䌽筆試みに操れば、香箋遂に滿つ。行雲托すべきも、夢想還た勞す。 九重千日、詎ぞ倡家を想はんや。單枕一宵、便ち蕩子の如し。 當に影を照らして雙び來らしめ、一鸞をして鏡に羞ぢしむべし。窺窗獨坐して、嫦娥をして人を咲はしむる勿かれ。