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酔古堂剣掃 / 集情・家は陽臺に勝る

家勝陽臺,為懽非夢。人慙蕭史,相偶成仙。輕扇初開,忻看笑靨。長眉始畫,愁對離粧。廣攝金屏,莫令愁擁。恆開錦幔,速望人歸。鏡臺新去,應餘落粉。熏爐未徙,定有餘煙。淚滴芳衾,錦花長溼。愁隨玉軫,琴鶴恆驚。錦水丹鱗,素書稀遠。玉山青鳥,仙使難通。䌽筆試操,香箋遂滿。行雲可托,夢想還勞。九重千日,詎想倡家?單枕一宵,便如蕩子。當令照影雙來,一鸞羞鏡。勿使窺窗獨坐,嫦娥咲人。

新字:家勝陽台,為懽非夢。人慚蕭史,相偶成仙。軽扇初開,忻看笑靨。長眉始画,愁対離粧。広摂金屏,莫令愁擁。恒開錦幔,速望人帰。鏡台新去,応余落粉。熏炉未徙,定有余煙。涙滴芳衾,錦花長湿。愁随玉軫,琴鶴恒驚。錦水丹鱗,素書稀遠。玉山青鳥,仙使難通。䌽筆試操,香箋遂満。行雲可托,夢想還労。九重千日,詎想倡家?単枕一宵,便如蕩子。当令照影双来,一鸞羞鏡。勿使窺窗独坐,嫦娥咲人。

書き下し

家は陽臺に勝り、懽を爲すは夢に非ず。人は蕭史に慙づるも、相偶して仙と成る。 輕扇初めて開き、忻びて笑靨を看る。長眉始めて畫き、愁ひて離粧に對す。 廣く金屏を攝め、愁ひをして擁せしむる莫かれ。恆に錦幔を開き、速かに人の歸るを望め。 鏡臺新たに去りて、應に落粉を餘すべし。熏爐未だ徙さず、定めて餘煙有らん。 淚は芳衾に滴り、錦花長く溼ふ。愁ひは玉軫に隨ひ、琴鶴恆に驚く。 錦水の丹鱗、素書稀に遠し。玉山の青鳥、仙使通じ難し。 䌽筆試みに操れば、香箋遂に滿つ。行雲托すべきも、夢想還た勞す。 九重千日、詎ぞ倡家を想はんや。單枕一宵、便ち蕩子の如し。 當に影を照らして雙び來らしめ、一鸞をして鏡に羞ぢしむべし。窺窗獨坐して、嫦娥をして人を咲はしむる勿かれ。

現代語訳

わが家は巫山の神女が王と逢った陽台にもまさり、二人の歓びは夢ではありません。私は蕭史(妻の弄玉と共に仙人となった笛の名手)には及ばず恥ずかしいけれど、あなたと連れ添って仙人になった心地でした。婚礼で顔を隠す軽い扇が初めて開かれたとき、私はあなたのえくぼの笑顔を喜んで見ました。長い眉を描き始めたばかりなのに、あなたはもう愁いを抱いて別れの化粧に向かいました。金の屏風を広くたたんで、愁いに閉じこめられないようにしてください。錦の帳をいつも開けて、私が早く帰るのを待っていてください。離れたばかりの鏡台には、白粉がこぼれて残っているでしょう。香炉はまだ動かしていないので、きっと煙の名残があるでしょう。あなたの涙はかぐわしい夜具に落ち、錦の花模様はいつまでも濡れていることでしょう。愁いは琴の玉の糸巻きにつきまとい、別れの鶴の曲にいつも心が騒ぐことでしょう。錦江の赤い鱗の魚に託す手紙は稀で遠く、玉山の青い鳥のような仙界の使いも通じにくいものです。彩りの筆を試しに取ると、香る便箋はたちまち思いで埋まりました。流れる雲には託せても、夢の中の思いもまた苦しいものです。宮中に千日仕えていても、どうして色町の女など思うでしょうか。独りの枕で一夜を過ごすだけで、まるで家を離れてさすらう男のようです。二人並んで鏡に映る日を必ず迎えて、つがいを失った鸞鳥が鏡を恥じるようなことにはさせません。窓辺で独り坐るあなたを、月の嫦娥に笑わせるようなことにはさせないでください。

解説

集情の最初の則は、四字句を対にして重ねた六朝風の美文で、家を離れた夫が残してきた妻へ思いを送る手紙の形をとっています。陽台は巫山の神女が朝は雲、夕べは雨となって楚王と逢った場所、蕭史は妻の弄玉と鳳凰に乗って仙界へ去った笛の名手で、どちらも夫婦や恋人の歓びの象徴です。赤い鱗の魚と青い鳥は、ともに手紙や便りを運ぶ使いのたとえです。鸞と鏡は、つがいを失った鸞鳥が鏡に映る自分の姿を見て悲しみ死んだという故事によります。嫦娥は月に住む仙女です。新婚の喜び、別れの化粧、涙に濡れた夜具と、情景を一つずつ重ねて、離れて暮らす夫婦の切なさを描いています。遠く離れた家族を思う気持ちは、単身赴任や遠距離の暮らしが珍しくない今日にもそのまま通じるものです。

この章句が説くこと

夫婦離別恋慕手紙

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