酔古堂剣掃 / 集奇・金河に雁に別る
金河別雁,銅柱辭鳶,關山天骨,霜木雕年。
新字:金河別雁,銅柱辞鳶,関山天骨,霜木雕年。
書き下し
金河に雁に別れ、銅柱に鳶を辭す。 關山は天骨、霜木は年を雕む。
現代語訳
北の金河では雁に別れを告げ、南の銅柱では鳶に別れを告げます。関所のある山々は天の骨組みのようにそびえ、霜にうたれた木々は年とともにしぼんでいきます。
解説
北と南の遠い辺境を並べて、旅や従軍の厳しさを描いた一則です。金河は北方の辺境を流れる川で、雁が行き交う塞外の地として詩に詠まれます。銅柱は、後漢の馬援が南方の交趾を平定したときに立てたと伝えられる銅の柱です。馬援は南方の瘴気の中で、鳶が空から水に落ちるのを見たと語ったと伝えられ、鳶はその苦しい遠征を思わせます。関山は国境の関所のある山々、天骨は天がつくった骨組みのような険しさを言います。霜木雕年の雕は「凋む」に通じ、年ごとに木々が枯れしぼむ寂しさです。遠く離れた土地に身を置く人の孤独を、短い四字句で凝縮しています。
この章句が説くこと
辺塞旅愁馬援孤独風景
関連する章句
-
『酔古堂剣掃』集豪・縹緲たる孤鴻縹緲たる孤鴻、影窗際に來る。戶を開きて之に從へば、明月懷に入り、花枝零亂たり。楓落ち吳江の句を朗吟すれば、人をして淒絕たらしむ。
-
『酔古堂剣掃』集倩・明月故人に減ぜず幽堂晝密かにして、清風忽ち來たりて好伴となる。 虛窗夜朗らかにして、明月故人に減ぜず。
-
老子・第20章学を絶てば憂い無し。唯と阿と、相去ること幾何ぞ。善と悪と、相去ること若何。人の畏るる所は、畏れざるべからず。荒としてそれ未だ央きざるかな。衆人は熙熙として、太牢を享くるが如く、春に台に登るが如し。我れ独り泊としてそれ未だ兆さず、嬰児の未だ孩わざるが如し。儽儽として帰する所無きが若し。衆人は皆な余り有るに、我れ独り遺れたるが若し。我れは愚人の心なるかな、沌沌たり。俗人は昭昭たるに、我れ独り昏昏たり。俗人は察察たるに、我れ独り悶悶たり。澹としてそれ海の若く、飂として止まる所無きが若し。衆人は皆な以うる有るに、我れ独り頑にして鄙に似たり。我れ独り人に異なりて、母に食わるるを貴ぶ。
-
『幽夢影』巻下・月を邀へて愁ひを言ふ淸宵に獨り坐し、月を邀へて愁ひを言ふ。良夜に孤り眠り、蛩を呼びて恨みを語る。
-
徒然草・第75段つれづれわぶる人は、いかなる心ならむ。紛るゝ方なく、唯一人あるのみこそよけれ。世に従へば、心外の塵にうばはれて惑ひ易く、人に交はれば、言葉よそのききに随ひて、さながら心にあらず。人に戯れ、物に争ひ、一度はうらみ、一度はよろこぶ。そのこと定れることなし。分別妄りに起りて、得失やむ時なし。まどひの上に酔へり、酔の中に夢をなす。走りていそがはしく、ほれて忘れたること、人皆かくのごとし。いまだ誠の道を知らずとも、縁を離れて身を閑にし、事に与らずして心を安くせむこそ、暫く楽しぶともいひつべけれ。「生活、人事、技能、学問等の諸縁をやめよ。」とこそ、摩訶止観にもはべれ。
-
『韓非子』和氏第十三人主、能く大臣の議に倍き、民萌の誹を越え、獨り道言に周するに非ずんば、則ち法術の士、死亡に至ると雖も、道必ず論ぜられざらん。