酔古堂剣掃 / 集奇・三寸の舌
儒有一寸之宮,自不妨草茅下賤;士無三寸之舌,何用此土木形骸。
書き下し
儒に一寸の宮有らば、自ら草茅下賤を妨げず。 士に三寸の舌無くんば、何ぞ此の土木の形骸を用ゐん。
現代語訳
儒者に一寸四方の宮(心)があれば、草ぶきの家に住む身分の低い暮らしであっても、何の差し支えもありません。士に三寸の舌(弁舌)がなければ、土や木のようなこの体を持っていても、何の役に立つでしょうか。
解説
内に持つ心と、外に働きかける言葉とを対にした一則です。一寸の宮は、胸の中の小さな宮殿、すなわち心を指すと読めます。心という住まいが確かであれば、外の住まいが粗末でも構わないというのが前の句です。後の句の三寸の舌は弁舌のことで、自分の考えを人に伝える力がなければ、体だけあっても土や木の人形と変わらないと手厳しく言います。土木形骸は、飾らない体を言う言葉として『世説新語』にも見えます。心を養うことと、それを言葉にして世に働きかけることの両方がそろって、はじめて士と言えるというのでしょう。考えはあるのに伝えられない、という悩みを持つ人への励ましとしても読めます。
この章句が説くこと
修身弁舌清貧心表現
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